ビジネス

2022.05.30

ビジネスを成長させるために必要な3つのストーリー

Peshkova / Shutterstock.com

高報酬のクライアントや最高の人材を引きつけたければ、然るべきストーリーが必要だ。具体的に言えば、確かなストーリーを3つ、打ち出さなくてはならない。

ここでは、さまざまな企業の最高経営責任者(CEO)を歴任後、ビジネスメンターに転向したアーネスト・ワスマン(Ernest Wassman)のアドバイスを紹介しよう。

ワスマンは、40年にわたる輝かしい実績の持ち主だ。企業向けコンピューターシステムメーカー、レクソン・ビジネス・マシーンズ(Rexon Business Machines:現レクソン)のCEO時代は、同社を倒産の危機から救い出し、株式公開で3200万ドルの資金を調達したほか、同社とその製品のイメージを一新させた。

続いて、ITサポート企業、トールグラス・テクノロジーズ(Tallgrass Technologies)のCEOに就任すると、黒字化するまで立て直し、エクサバイト(Exabyte)への売却を進めた。エクサバイトではマーケティング担当副社長を務め、売上1億6500万ドル、利益60%増を達成し、株価を6ドルから22ドルまで押し上げた。

「現代の起業家たちは創造性にあふれている。それぞれが創意に富み、並外れた才能と自由な発想力を備え、革新性ですべてを一変させる可能性を秘めたアイデアを持っている」とワスマンは話す。

起業家として先頭に立つ者にとって、重要な意味を持つのが「ストーリー(物語)」だ。神経科学分野の研究で明らかになったように、意思決定の大部分は、論理ではなく感情が担っているからだ。

では、投資家や顧客、トップ人材たちの「感情を司る脳」に納得してもらうには、どうすればいいのだろうか。意思決定を司る脳の部位は、「ストーリー」を理解するようにできている。

筆者は、有名投資家ウォーレン・バフェットに関する本を執筆した。その際、持ち株会社バークシャー・ハサウェイを率いる伝説的リーダーである同氏が、説得や、メディアでの話題作り、世界的ブランドの構築のために、ストーリーをどのように活用したのかを知った(透明性の観点から、バフェットならびに同氏が投資する各種企業のトップが語ったストーリーに筆者は感銘を受け、バークシャー・ハサウェイへの投資を決意したことをお断りしておく)。

事業を拡大するためには、次の3つについて適切なストーリーを語らなければならないと、ワスマンは話す。

1.どうやって顧客を獲得するのか。
2.どうやって現金を獲得するのか。
3.どうやって人材を獲得するのか。

顧客獲得に関するストーリー:「このストーリーは、カスタマーエクスペリエンスから始まる。顧客が抱える問題を特定し、成功に向けてどう導いていくかを保証するのだ」とワスマンは言う。「そして、ストーリーを業界全体へと広げ、競争的優位があり、カスタマーエクスペリエンスと一致している企業であることを示す」

現金獲得に関するストーリー:「このストーリーは、『売上-利益=コスト』という計算式から始まる」とワスマンは説明する。「顧客が満足すれば、売上を獲得できて利益が発生するので、コスト面の心配はいらない。つまり、投下した全投資からのROIC(投下資本利益率)を意味する」

人材獲得に関するストーリー:「このストーリーは、人材を引き付け、保持し、報いるという、3つの部分で構成される」とワスマンは説明する。「人事ポリシー、採用手続き、従業員のトレーニングと評価、報酬が整うと、従業員には、当事者としての思考が育まれる」
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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