米メディアは先週、米金融大手ゴールドマン・サックスの内部メモの情報として、同社でパートナーとマネージング・ディレクターの役職に就く社員が今後、有給休暇を無制限に取得できるようになると報じた。同様の福利厚生を導入する企業はこのところ増えている。
だがメモではさらに、より大きな意味を持つ別の方針変更も通達された。来年から、ゴールドマンの全社員が年間最低3週間の休暇取得を義務付けられるというものだ。デービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は米CNBCテレビに対し、「従業員はこれまで、与えられた休暇を消化してこなかった」と語っている。
2年以上続いたコロナ禍によって、人々はこれまでになく深刻な燃え尽きやメンタルヘルス危機に陥り、離職率は記録的水準に上昇。これを受け、経営者の多くが、有給休暇は単に人材誘致のためにアピールすべき特典ではなく、従業員に課す義務とする必要があるかもしれないことに気付いた。
企業から相談を受けるコンサルタントたちは最近、休暇の義務化がよく話題に上がるようになったと語っている。義務化の方法としては、社員の取得状況を細かく管理するやり方もあれば、全社的な休業の形で全従業員が同時に休暇を取得するやり方もある。
今月初めには、英会計大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が、7月に1週間の全社休業を実施することを決定。加えて、管理職が課員の休暇取得状況を把握し、取得を促しやすくするため、ダッシュボードなどのツールも導入するとした。
米人事コンサルティング企業マーサーのシニアパートナー、リッチ・ファーステンバーグによると、コロラド州やメーン州では最近制定された新法で、雇用主は未消化の休暇を賃金として扱わねばならないと定められた。これにより、未使用分の休暇が消滅する制度は無効になる可能性がある。
「従業員は休暇中も、仕事から完全に離れてはいない」とファーステンバーグは指摘する。その影響として、生産性の低下や離職率の上昇など、さまざまな問題が見られるようになっているという。