ビジネス

2022.05.29 07:00

有休取得の義務化、米企業で拡大傾向に


しかしおそらく最大の要因は、「フレキシブル」や「無制限」の休暇制度を採用したものの、新型コロナウイルスが世界的に流行する中で従業員の休暇取得を促進するには不十分だったことに気付いた企業が多かったことだろう。特に、激務の風土が根付いた金融やテクノロジー業界では、こうした制度は休暇取得につながらなかった。

フレキシブルや無制限の休暇制度が多くの企業で採用された背景には、未消化分の有休が会計上で負債として計上されることを避ける意図があった。休暇の日数を定めなければ、計上すべき休暇を数字として出す必要がなくなる。

テクノロジー業界で人事責任者としての経験を長く持つジェニー・ディアボーンによると、当初は多くの企業がこうした制度に飛びついたが、それから5年ほどたった今は「誰も休暇を取得していない」状況だという。

フリーランスのマーケティング専門家によるオンデマンドサービスを提供するウィー・アー・ロージーの創業者ステファニー・ナディ・オルソンは2020年、無制限の休暇制度を廃止し、四半期ごとに5日間の休暇取得を義務化する方針に転換。休暇を取得しない場合は、ボーナスを一切支給しないことにした。(加えて、いつでも取得できる5日間の休暇も与えられ、年間の有休日数は25日となる)

コロナ流行が始まった頃、創業からわずか1年の小さなスタートアップだった同社の従業員はオルソンに対し、自分が休暇を取得することで仕事が滞るのではないか、同僚に仕事を代わってもらうことに負い目を感じる、といった心境を語っていた。だが休暇取得を義務化してボーナスの支給と関連付けたことにより、休暇取得に関する職場の考え方はたちまち変化し、従業員の罪悪感も消えたという。

編集=遠藤宗生

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