今のところ米国では返品無料であるものの、いつまで続くかはわからない。ZARAの返品ポリシーは米国でもすでにかなり厳しい(レシートあり、購入日から30日以内必着、新品同様の状態などが条件)が、世界経済の現在の情勢を踏まえると、ZARAなども有料化を検討せざるを得なくなるのではないか。
とくに最近は、返品システムが消費者に「乱用」され気味になっているという事情もある。サイズの異なる商品をまとめて注文し、試着して体に合うものを選び、残りは返品するという買い方をする人は多い。だが、ZARAは一貫して寸法どおりに服を作っているので、実のところここまでサイズ選びに手間ひまをかける必要はない。こうした返品が続くとZARA側はコストがかさんでしまう。
もちろん、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)により、店舗が閉鎖されたり実店舗で買い物が手控えられたりした時期には、オンラインショッピングが消費者の需要の受け皿になった。そのころ、返品料をとる小売店は全体の40%足らずだった。
シアーズやJCペニーが昔、半年に1回発行していたカタログについて、筆者は折に触れて、消費者が安心して商品を選び、注文できるように具体的な商品情報を明記すべきだと主張していた。当時、返品などという面倒くさいこと(当然、経費もかかる)は誰も(つまり客側も店側も)したくなかったからだ。
現在はどうか。オンライン店舗の返品システムは、客側からすると使い勝手のよいものだが、店側からすると課題も生んでいる。客がネットで買い物をする場合、実店舗と違って販売員からのコメント(「お似合いですよ」といったような)を得られないため、購入に際して迷いが生じることがある。だから、家で試着してみたあと一部は返品する前提で購入しがちになるわけだ。最近はZARAなどの商品も大幅に値上がりしていることから、客側がこうしたシステムを利用しようとするのはますます理にかなったことになっている。
だがその結果、小売店側は現実に大幅なコスト負担が生じている。ZARAが英国で返品を有料化したのもそのためだ。英国ではユニクロなどもオンラインでの注文について返品手数料を徴収するようになっている。各社は「返品大国」米国でも返品を有料化できるだろうか。UPSによると、米国内の今年(昨年末のクリスマス以降)の返品取扱数は前年比10%増の6000万件に達している。