パリを拠点とするミッドナイト・トレインズ(Midnight Trains)や、かつてファーストクラスの寝台列車で欧州10都市を結び、1970年代に人気のピークを迎えた「欧州特急(TEE)」の復活は、ほんの一例だ。
高速列車も運行本数を増やしているが、のんびりとした列車の旅も復活を果たしている。50周年を迎えるマルセイユ─パリ間の鉄道路線では、絵葉書のような美しい町や村で途中下車し、南仏の田舎を見て回れる。パリ─バルセロナ間の路線はリモージュやトゥールーズ、ピレネー山脈を楽しめる。パリ─ベルリン間の路線では、高速と低速の路線が利用できる。
特にフランスでは低速列車の復興が進んでおり、高速列車のTGVが停車せずに長い間忘れられていた村々を経由する路線が再開する予定だ。ニュースサイト「ザ・ローカル」によると、そのうちの一つはボルドー発リヨン行きの路線で、リブルヌ、ペリグー、リモージュ、ゲレ、モンリュソン、ロアンヌを経由する約7時間30分の旅となる。ブルターニュ地方のルクロワジックからスイスのバーゼルを11時間余りで結び、途中で25駅に停車する新路線も計画されている
鉄道の人気復活の理由の一つに、欧州連合(EU)の各国政府が鉄道優遇政策を進めていることがある。ベルギーは、欧州の持続可能な交通手段を推進する上で国際鉄道ハブとしての立ち位置を確立することを目指している。他にも多くの国が、温室効果ガス排出量の目標達成のため、飛行機ではなく列車の利用を推奨。フランスとオーストリアでは、列車で2時間半以内に移動できる場所への航空便提供を法律で禁止した。
鉄道は家計にも優しいかもしれない。ウクライナ危機に伴う燃料価格の高騰によりフライト料金は変動しており、燃油サーチャージが増える可能性もある長距離便の魅力は下がっている。
一方の列車の旅では、スイスの「氷河急行」でマッターホルンを眺めたり、イタリアの海岸沿いを走る19世紀の鉄道路線でチンクエ・テッレの5つの村の間を旅したりと、鉄道でしか体験できない場所を、快適な寝台やレストランのテーブルから楽しめる。
フランスで新たに開通する路線では、同国の食文化も楽しめるサービスが提供される。ただ食堂車を用意するのではなく、各停車駅で地元のレストランやカフェが郷土料理を売る形となり、乗客はゆったりとしたペースで景色を楽しみながら地元産の食べ物を味わうことができる。