1990年1月にロシアの首都モスクワのプーシキン広場にオープンしたマクドナルド1号店は、冷戦の雪解けムードの象徴だった。そのわずか1年後にはソビエト連邦が崩壊。ロシアは欧米各国の企業に対し、自国の市場を開放した。
だが、それから30年以上たった現在、マクドナルドもロシア事業の売却を決めるなか、欧米各国の小売・飲食関連企業の多くが、ロシア市場での一時的な店舗の閉鎖や、恒久的な撤退を発表している。
そして、ロシアはそうした西側諸国のブランドに代わるものとして、トルコや中国、インド、そしてブラジルなどの企業に対し、自国への進出を求めている。これらの4カ国は(少なくとも今のところ)、ロシアのウクライナへの軍事侵攻について、ほぼ中立の立場を保っている。
欧米の小売企業の相次ぐ店舗閉鎖に落胆するロシアのショッピングモールは、トルコをはじめこれらの国の企業が、欧米のブランドが残していった大きな隙間を埋めてくれることを期待している。
ロシアのショッピングセンターは最悪の場合、30~40%が空き店舗になる可能性もある。侵攻開始後の3月、ロシア・ショッピングセンター協議会(RCSC)は200以上のブランドの誘致を目指し、トルコに代表者を派遣したことを認めている。また、中国でも今後、同様の働きかけを行う予定だという。
インドの小売企業も、ロシア市場での機会を探っている。家具・インテリア販売のマスパー(Maspar)やファッション小売のキラー・ジーンズ(Killer Jeans)などが出店を計画中とされている。さらに、少なくとも4社がすでに、フランチャイズ契約を結ぶことで合意。そのほか十数社が、後に続くとみられている。
インドはロシアによるウクライナでの戦争犯罪の証拠がますます増えるなかでも、中立的な立場を維持し、ロシアとの取引を継続している。その理由として挙げているのが、防衛、石油、食糧の調達におけるロシアの重要性だ。