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2022.05.22

米アマゾン元参謀が明かす最強の「組織」「働き方」「リーダー」とは

コリン・ブライアー ワーキング・バックワーズ共同設立者 (Courtesy of Colin Bryar)


──1つ目は「顧客へのこだわり」、2つ目は「オーナーシップ」ですよね。

ブライアー:そうだ。リーダーにはオーナーシップ(経営陣としての当事者意識)が必要であり、長期的視点で考え、会社全体のために行動し、「それは私の仕事ではない」などと言うべきではない。

このプリンシプルが反映されているのが報酬哲学だ。基本給と、数年単位の長期的な株主価値に基づく報酬体系が、リーダーの行動と会社の長期的成功を連動させるための動機づけになっている。

4つ目の「正しい判断を多くできる」だが、リーダーは優れた判断力と経験に基づく直感を備え、多様な考え方を追求し、自分の考えを反証することもいとわないことが必要だ。データを多く集めれば、新たな考えが生まれる。たゆまぬ学びと改善が大切だ。これは、3つ目の「創造し、シンプルにする」、5つ目の「学び、好奇心を持つ」と連動している。

──6つ目が「最高の人材の採用・育成」、7つ目が「最高水準の追求」ですね。

ブライアー:「最高水準の追求」はすでに話したが、例えば、配送センターで商品の配置を間違えたらチームに影響し、配達遅延というサービス低下を招く。根本原因の追究とプロセスの修正が必要だ。

8つ目は「広い視野で大きな発想をする」だ。狭い視野で考え、水準を落とせば、その程度の結果しか得られない。だが、長期的視点に立ち、大きな発想をすれば、大きな結果を手にできる。

9つ目は「迅速に行動する」だ。ジェフは、よくこう言っていた。「欲しいと思う全情報を得てから決断するのでは遅すぎる。7割で手を打つべきだ」と。スピードは重要だ。間違えたら素早く修正し、最初の考えをデータで反証すればいい。

10番目の「倹約」は創造につながる。倹約を心がければ、異なる解決策が見えてくる。事業の大半を占める小売業では低価格が重要な戦略であるため、コスト削減と秀逸な顧客体験の両立が目標だ。

12番目は「深掘りする」だが、多くの企業では幹部の地位が上がるにつれ、大局的な考えに目が行き、細部を見なくなる。だが、アマゾンは違う。

例えば、1時間の会議で多くの「評価指標(メトリクス)」を設定し、詳細な経営分析を行う「週次ビジネスレビュー」。また、スライドのプレゼンより多くの情報を得られる叙述形式の「6ページ資料」が好例だ。この2つを通し、リーダーは問題を深掘りすることができる。

──13番目は、「信念を持つ:異議を唱え、決定にコミットする」ですね。

ブライアー:たとえ気まずくても異議を唱え、議論を重ねることで、真実を見いだすことができる。そして、決定が下ったら全面的にコミットし、前進する。

14番目は「結果を出す」だが、そのためには「重要なインプットにフォーカスする」。収益性など、長期的にコントロールしがたい「アウトプット指標」でなく、コスト構造や品揃えなど、コントロール可能な「インプット指標」を追求する。

そして、新たに追加された15番目のプリンシプルが「職場環境をより安全にすべく、日々、取り組む」、16番目が「成功と規模、拡大には大きな責任が伴う」だ。

アマゾンの従業員はいまや全世界で130万人。同社のサプライチェーンなどが世界や環境に与える影響の大きさは、1997年の上場当時と様変わりした。その責任を真剣に受け止めなければならない。
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インタビュー=肥田美佐子

この記事は 「Forbes JAPAN No.094 2022年月6号(2022/4/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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