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2022.05.22 08:30

インド発のスニーカー「Campus」創業者がIPOでビリオネアに

(c)Campus Activewear

株式市場の混乱が続く中、インドで新たなビリオネアが誕生した。デリーに拠点を置く靴メーカー「キャンパス・アクティブウェア(Campus Activewear)」は5月9日、ボンベイ証券取引所(BSE)とナショナル証券取引所(NSE)に上場を果たし、株価はIPO価格を23%上回った。これにより、同社の74%を保有する創業者のハリ・クリシャン・アガーワル(66)の保有資産は約10億ドルに到達した。

90億ドル規模のインドの靴市場は、近年3人のビリオネアを生んでいる。デリーに拠点を置く売上高3億5000万ドルの「リラクソ・フットウェア(Relaxo Footwear)」を経営する兄弟のMukand Lal DuaとRamesh Kumar Duaの2人と、ムンバイに拠点を置く売上高1億700万ドルの「メトロブランズ(Metro Brand)」を昨年12月に上場させたRafique Malikらだ。

アガーワルは、1983年にスポーツシューズブランドのActionを立ち上げ、2005年に10ドル以下のスポーツシューズ「Campus」を発売した。ナイキやアディダスなどの世界的ブランドの靴が35ドル以上であるのに対し、彼らは手頃な価格をアピールした。

「当社の創業者は、インドのスポーツシューズ市場にある大きな空白をうまく利用した」と、キャンパスの最高財務責任者のRaman Chawlaは述べている。

コンサルティング会社Technopakの4月のレポートによると、2021年度にキャンパスはインドのアスレジャー(アスレチックとレジャーにまたがる分野)市場において、最大のプレーヤーだった。同社の市場シェアは金額ベースで17%、販売数量ベースで25%近くに及んでいた。

キャンパスの昨年の売上は、パンデミックの影響でやや落ち込んだものの、2021年12月までの9カ月間の売上高は1億1100万ドル(約144億円)に達していた。

インドのスポーツ市場の巨大なポテンシャル


アナリストは、キャンパスのスポーツシューズの需要が、さらに上昇し続けると考えている。Technopakによると、アスレジャーやスポーツ用品に対する一人当たりの支出額は中国では33.8ドルで、米国では227.3ドルにも及ぶが、インドではわずか1.9ドルだという。

同社の成長ポテンシャルに期待する投資家が、プライベートエクイティ企業のTPGと、電気製品メーカーのHavellsを支配するビリオネアのAnil Rai Guptaらだ。彼らは2018年にキャンパスに投資し、IPOで株式の一部を売却した後も、それぞれ7.6%と2%の株式を保有し続けている。

ムンバイの投資会社Motilal OswalのアナリストのSneha Poddarは「アスレジャーはまだ発展途上のセグメントだ」と述べている。「キャンパスの主な市場はインド北部と東部の小都市だが、今後は大都市も視野に入れて全国的な事業展開を進めている。さらに、スポーツシューズからカジュアルシューズへと製品のレンジを広げている」とPoddarは話す。

キャンパスは、上場した今もなお、アガーワル一家のファミリービジネス的な企業で、CEOは彼の息子でパデュー大学出身の工業エンジニアであるニキル・アガーワル(37)が務めており、その妻のペルナが最高マーケティング責任者を務めている。

編集=上田裕資

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