イエレン長官は、中絶の権利が認められることは、より多くの女性が教育を受け、収入を得る機会を得る可能性を高めることになり、それは米経済に利益をもたらすと述べている。
さらに長官は、米シンクタンク、女性政策研究所が2000年に発表した調査結果を例に挙げ、中絶を合法化した1973年の「ロー対ウェイド」判決の後、黒人女性の労働力率は6.9ポイント上昇したと指摘した(白人女性は2ポイントの上昇にとどまっている)。
そのほか長官は、中絶が認められることは、より多くの女性たちが貧困、またはそのために公的支援を必要とする状況から抜け出すことにつながり、さらには子どもたちが将来、より多くの収入を得られるようになる可能性を高めることになると語った。
望まない妊娠・出産と生活の困窮
望まない妊娠を経験した女性およそ1000人(中絶した、中絶ができなかった女性両方を含む)を対象にカリフォルニア大学サンフランシスコ校が行った10年に及ぶ追跡調査の結果では、希望しても中絶ができなかった女性は出産後、貧困世帯に暮らしている割合が高かった。
さらに、中絶できなかった女性たちには、最低限の生活費を賄うことができない、クレジットスコアが低い、負債が多い、破産や立ち退きを経験している、といった人が多くなっていた。
こうした女性たちが抱える負債額は、妊娠前より平均78%増加していた。非営利の経済研究機関、全米経済研究所によると、同大学のこの調査で望まない妊娠後に出産したことがわかっている女性たちの生活の困窮は、出産から少なくとも5年続いていた。
これらはすべて、米経済全体に影響を及ぼす要因だ。IWPRが2021年に発表した調査結果によると、一部の州政府が中絶を規制していることで、米経済は年間およそ1050億ドル(約13兆5000億円)の損失を被っているという。