経済全体に悪影響を及ぼす要因は、労働力の減少と所得水準の低下、休暇の取得や離職の増加などだ。すべての州が中絶の規制を撤廃すれば、米国の国内総生産(GDP)は、およそ0.5%増加するとされている。
IWPRはそのほか、中絶を制限している州はそれによって、すでに経済に打撃を受けていると指摘する。例えばテキサス州の損失は、年間およそ140億ドルのぼり、ミズーリ州は規制を撤廃すれば、州のGDPが1.02%増加するという。
また、IWPRによると、中絶に関する各州の規制がすべて撤廃されれば、15~44歳の女性の収入は、平均1610ドル増加すると推計される。15~44歳の女性およそ50万5000人が労働力に加わることになり、合わせて年間約30億ドルの収入を得ることになるほか、すでに雇用されている女性たちは、年間およそ1018億ドルを余計に稼ぐことになるとみられている。
米政治専門サイトのポリティコは先ごろ、米連邦最高裁判所は中絶を合憲と認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を覆す可能性があると伝えた。
リークされた最高裁判事の意見書の草案は、ミシシッピ州が妊娠15週目以降の中絶を禁止したことを巡る裁判に関連して、今年2月に作成されたものだという。ジョン・ロバーツ最高裁長官はこれについて、「最終的な見解ではない」と述べているが、米紙ワシントン・ポストは、判事の過半数は「ロー対ウェイド判決」の破棄に賛成だと報じている。
中絶の権利を支持するグトマーカー研究所は、連邦最高裁がそうした判断を示せば、全米の26州が中絶を禁止することになる可能性があるとしている。