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2022.05.18 16:00

オープンコミュニケーションで“情報格差”を解消。Slackを中枢に据えたLIFULLのコミュニケーション改革

日本でも利用が広がるSlackは、単なるチャットツールではない。クラウド上に「Digital HQ(ヘッドクオーター:中枢)=デジタル本社/職場」を構築し、リアルオフィスだけでは追求できないハイブリッドな働き方を実現する。Digital HQは企業に何をもたらすのか。LIFULLテクノロジー本部コーポレートエンジニアリングユニット エンタープライズアーキテクトグループグループ長兼インフラアプリグループグループ長の飯塚大仁に話を聞いた。


従来のツールで抱えていた課題を解決


「あらゆるLIFEを、FULLに。」を掲げ、事業を通して社会課題の解決に取り組むLIFULL(ライフル)は、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」の運営をはじめ、人々の暮らしや人生にまつわるさまざまな事業を展開している。

同社は新型コロナウイルスの感染拡大前からリモートワークを進め、業務効率化を推進してきた。そのためのITツール利用には、さまざまな課題があったと、同社テクノロジー本部コーポレートエンジニアリングユニットエンタープライズアーキテクトグループグループ長の飯塚大仁は言う。

「以前使っていたツールには、検索性や情報の透明性が非常に悪いという問題がありました。それが業務の効率向上を妨げていたのです。検索すると関係ないワードがいっぱい出てきて、肝心な情報になかなか辿り着けないということがよくありました」

投稿数が多いと、出社して未読の投稿を遡って確認するために1時間以上を費やす人もいたという。そうした非効率性によって、社内では「情報格差」が生じていたのだ。

課題はそれだけでない。同社ではさまざまな属性の人が業務に関わっており、すべての人が同じツールを使うことは、セキュリティ上の懸念があったと飯塚は打ち明ける。

「ユーザーの権限の概念がシステム管理者と利用者という2種類にしか分かれていなかったので、社員、契約社員、派遣社員など異なる属性の社内の人間と、パートナー企業さんや業務委託の協力会社さんがすべて同じ環境に存在していました。情報統制の観点でいうと、間違って情報を伝えてしまったり、もしくは逆に見たくない情報が見えてしまったりというリスクがありました。ですので、以前のツールでは社内的に広く知ってほしいことがあるときは、社員全員を入れた別の共有方法を考えなければならず、非常に手間がかかっていました」

これらの課題を解決するツールとして飯塚が選択したのがSlackだ。Slackの検索機能は精度が高く、自分が参加しているオープンなチャネルで行われた会話から、的確なワードをすべて探し出してくれる。2021年11月にSlackを導入してから社内での情報格差は解消され、効率が大幅に向上したという。

さらに、Slackの導入は、セキュリティ上の懸念も解消した。

「Slackでは、アカウントの属性を分けることができます。弊社では、社員は一般的なアカウントを使っていますが、業務委託の方はシングルチャンネルゲストしかアカウントを発行していません。アカウントの種別で情報を公開するチャンネルと公開しないチャンネルとを区別することにより、誤って社外の方に情報を送るということがなくなりました」


飯塚大仁 LIFULLテクノロジー本部コーポレートエンジニアリングユニット エンタープライズアーキテクトグループグループ長兼インフラアプリグループグループ長

オープンコミュニーションで情報共有を推進


Slackを導入する入り口は検索の精度とセキュリティの担保だったが、全社員1,300名が利用するに至った根底には、Slackが掲げる「Digital HQ」への共感があった。

「当社では『デジタルワークスペース』と呼んでいますが、Slackさんが提唱する、どこからでもアクセスできるオンライン上の働く場所を構築したいと考えています。まだ途上ではありますが、さまざまな活用を進めています」

そのひとつは、部門や組織を超えたオープンコミュニケーションだ。

従来使用していたツールは、限られた人しかアクセスできない閉じられた(クローズドな)コミュニケーションだったため、会話の参加者以外には情報の共有がされにくかった。例えばある案件の担当者を探すだけでも、見つけることが大変だった。それがオープンコミュニケーションに移行することで、情報共有がしやすくなったのだ。

「部署内でやりたいことがあり、進めるうえで誰に聞いていいかわからないとき、たいていはマネージャーがそれを聞き、マネージャー同士が集まる横串の世界では共有されるのですが、下のメンバー同士で情報が伝わることはほとんどありませんでした。Slackであれば素早くチャンネルをつくってA部署とB部署が集まって話し合い、案件が片付いたら解散するといった柔軟な使い方が可能です」

気軽にチャンネルをつくることで、情報共有がしやすくなったのだ。

外部とのやり取りもSlackの導入により変わった。「Slackコネクト」を利用して、特定のチャンネルを社外のワークスペースと安全につなげることで、やり取りのスピード向上とセキュリティが高まった。

「メッセージを送るという意味ではメールとそれほど変わりませんが、日本人的な発想である『お世話になります』といった儀礼的な枕詞や自分を名乗る必要がなくなったので本題に早く入れます。例えばベンダーさんとやり取りするのにメールの場合、いちいちRFI(情報提供依頼書)を書いて情報提供してほしい旨を丁寧に伝えていたのですが、Slackコネクトだと『すいません、いまこんなことを考えているのですが、何か情報ないですか』のひと言で終わりです」

電話は相手がおかれている状況を考慮しないツールだし、メールは即時性に乏しい。Slackコネクトはダイレクトに相手に伝わり、相手が都合のいいときに返信することができる、極めて利便性の高いツールなのだ。

早くからリモートワークを推進してきたLIFULLは、Slackの機能を活用することにより、働き方がさらに柔軟になった。その機能のひとつは、昨年実装された「予約投稿」だ。

同社では、AM7時〜PM10時までが勤務可能な時間に定められている。AM11時〜PM4時までがコアタイムで、それ以外の時間は個々人がそれぞれの生活スタイルに合わせて設定できるのだ。ところが自分が朝7時から仕事をしているからといって、勤務を開始していない人にメッセージを送ることは迷惑になる。そこで重宝されるのが予約投稿なのだ。

「誰もが必ず働いている朝の11時以降に届くよう設定することで、送る方はあらかじめ書き込みができるし、受け取る側も勤務時間中に通知を受け取ることができます。この機能のおかげで、相手が働き始める時間まで書き込めないとう不便がなくなりましたし、その時間まで待機していなければならないという縛りもなくなりました」

Slackの導入は、社員同士が必ず同じ場所や時間に顔を合わせなくても、自然と非同期型のコミュニケーションができる環境を実現したのだ。



SlackをDX推進計画の中枢に


LIFULLは、Slackを業務の自動化や効率化にも活用している。

「弊社で利用しているシステム/サービスは、裏でアラート通知の処理が働いていて、従来は何かトラブルがあるとメールが届く仕組みになっていました。まだ完全に実装が終わっていませんが、それをすべてSlackに連携させようとしていて、専用のチャンネルを開設しました。そうすることで、いままで以上に迅速に対応することが可能になります」

他のシステムとの連携を進めることも、業務の効率向上に寄与している。同社ではGoogleドライブを業務に活用しているが、Slackでは、いちいちGoogleドライブのアプリを起動させなくても、チャンネル内でファイルを閲覧することができる。

ファイルを閲覧するためには権限が必要だが、共有するためのリンクを相手に送り、そのユーザーがいざ開こうと思ったら権限がなくて開けないということはよくある話だ。ところがSlackでは、リンクを送る際に権限のないユーザーがいると、権限を付与していいかを聞いてくれる。こうしたきめ細やかな機能が、ストレスフリーの働き方を実現するのだ。

今後はGoogleドライブだけでなく、システムごとに権限の申請・承認をするためのワークフローをSlackに実装したいと飯塚は言う。

「Slackは柔軟性やカスタマイズ性が高いです。普通のツールでは、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連携によってほかのシステムとの情報のやりとりはできますが、カスタマイズはほとんどできません。決められた範囲の中でしかやりたいことができないのですが、Slackはアプリケーションとの連携を推進していて、柔軟性が非常に高い。SaaS系のサービスは、Slackと連携することが当たり前という世の中の流れになっています。私たちとしても新しいサービスを導入する際、Slackと連携しているかが要件のひとつになっています」

ITリテラシーの高い企業が使っても要望に応えられるくらい、Slackは利便性が高いのだ。

LIFULLは昨年9月、「2025年に向けた社内ITシステムDX推進計画」を発表した。先の3月には経済産業省が定めるDX認定制度に基づく「DX認定事業者」の認定を取得し、さらにDXを加速させる計画だ。その計画を遂行するうえで欠かせないツールが、Slackなのだ。

「具体的にどのシステムをどのように変えるかは、決まっている部分もあれば決まっていない部分もあります。しかし、Slackをそのコアに据えることは確定しています。例えば勤怠の申請にしても請求書の処理にしても、専用のシステムが存在します。それらをすべてSlack上で作業できるような世界を構築したい。つまり、人とシステムの境目をすべてSlackにしたいのです」

DIgital HQ
https://slack-japan.jp/digital-hq/s/

飯塚 大仁◎LIFULLテクノロジー本部コーポレートエンジニアリングユニットエンタープライズアーキテクトグループグループ長兼インフラアプリグループグループ長。2008年に入社し、一貫して社内ITを担当。20年より現職。

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Promoted by Slack Japan / text by Humihiko Oobashi / photographs by Seiji Hirasawa / edit by Akio Takashiro