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2022.05.14 12:30

ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008、その個性を探るガストロノミー体験


MAGNETIC/惹きつけるような魅力 ビーツ




ビーツを塩釜でじっくり焼くことで表現される、完熟フルーツさながらの凝縮された甘味は、タイトル通り食する人を完全に虜にする。トレビスやエシャロットが奏でる香味も魅惑的で、ドン ペリニヨン ロゼと合わせることにより、ピノ・ノワールの華やかな果実味やジューシーさが引き出されていく。添えられたビーツのアイスクリームにはストロベリービネガーがあしらわれ、その甘酸っぱさはシャンパーニュの持つベリー系の果実味と酸味に見事に調和する。

VIBRANT/躍動感あふれる鮮やかさ 鴨




油をかけながら香ばしく火を入れた鴨肉は、パプリカパウダーやカレーパウダー、唐辛子オイルを使った鮮やかなピューレと共に供される。上に鎮座するヒメニンジンのローストは、山椒、クミン、コリアンダー、そしてキャラメルでキャラメリゼされているのだとか。

様々なスパイスを纏ったニンジンが鴨の味わいにヴィヴィッドな色彩を与え、そこに活き活きとしたドン ペリニヨン ロゼが溶け込むことで、口中で新たな共鳴が生まれてゆく。

TACTILE/触感 アマゾンカカオ




デセールはドン ペリニヨン ロゼの持つ様々な質感にフィーチャーしたアプローチ。カカオで作ったパイ生地のサクサクした食感、チョコレートのカスタードクリームの滑らかさ、キャラメルシートの艶やかさ、そしてクランチパウダーの弾ける食感……。それらがシャンパーニュのシルキーさやクリーミーさ、クリスプな発泡と同調し、甘美で儚い余韻に繋がっていく。


ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008 |5万3130円

様々な表情を持つこのミステリアスなシャンパーニュは、多彩なエッセンスを内包しているがゆえ、あらゆる角度からのアプローチに柔軟に対応してくれる。川手シェフ曰く「様々な要素を受け入れてくれる懐の深さ」があるのだという。

どんな料理にも、季節にも、天気にも、シーンにも、さらりと寄り添ってくれる包容力を持ちながら、確固たる芯をあわせ持ち、常に飲み手を魅了してやまないドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008。今回は、このミステリアスなシャンパーニュの何層にも重なるヴェールを、少しだけ剥がすことができた。それでもまだ、知らない魅力が隠れているはずで、その未知なる部分をもっと垣間見たい。気づけば私は完全にこのシャンパーニュの虜になっていた。

文=瀬川あずさ

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