新型コロナウイルス感染症の流行によりいくらか影が薄れたものの、米国では薬物の過剰摂取による死が再び急増し、生涯のうちオピオイドの過剰摂取により死亡する確率は現在、自動車事故や自殺により死亡する確率よりも高い。
米バイデン政権は、同国で増え続けるオピオイドの問題に対し新たな対応策を実施している。同政権はつい先日、2022年の国家薬物管理戦略を発表した。米大統領官邸の発表によると、この戦略は未治療の依存症と麻薬密売との闘いの両方に焦点を当てる。
バイデン政権の最初の行動項目として、戦略の中心的柱の一つとなるのがナロキソンの利用拡大だ。「Narcan(ナーカン)」の商標名で販売されているナロキソンは注射や鼻腔用スプレーで注入され、オピオイドによる過剰摂取を逆転させることができる。しかし、この治療が広まればオピオイドの使用者は誤った安心感を持たせられると考えられ、治療は論争の的となっている。
米AP通信が引用したところによると、米国家薬物管理政策局(ONDCP)の局長であるラーフル・グプタ博士は、ナロキソンは多くの医療サービスに採用されているにもかかわらず、切実に必要とされているコミュニティーにまだ届いていないと述べている。
フェンタニル検出試験も入手しやすく
他に命を救う可能性がある道具として、米国家戦略の下で入手しやすくなる予定になっているのが試験紙だ。この試験も先述のナロキソンと同様、薬物の使用を助長するとの非難に直面している。
この試験では、合成オピオイドフェンタニルなどの物質を検知することができる。フェンタニルは痛み止めの偽造処方薬に使われたり、違法薬物の有効性を高めるために使われたりすることが多く、有効性はヘロインの約50倍で、過剰摂取による死の多くと関連している。