同社の代表取締役社長兼CTOを務める小椋一宏氏に、起業家の素養や成長事業の創り方などについて、DIMENSIONビジネスプロデューサーの中山航介が聞いた(全3話中2話)
第一話:「仮説の99%は間違い」 起業家が事業選定で大事にすべきこと
──HENNGE Oneというプロダクトが生まれるまでに、いくつものプロダクトを出していますね。
歴史が長すぎて(笑)、一言では説明しづらいのですが、始まりは「インターネットの時代が来たら、企業がみんなそこから情報発信するに違いない」という大きな仮説でした。
この仮説は疑う余地が無いと思うのですが、「そのために企業は自社サーバーを構築して管理しなければならない。しかしそれではコストがかかりすぎるため、なんらかのツールが必要なはず」という仮説が次に生まれます。
創業当時はそれが最適解だと考え、サーバー管理ソフトの開発に邁進しました。
今から考えると当然ですが、その仮説には実際に一定需要があり、自治体などさまざまな組織の方々に使っていただきました。
我々の経営理念である「テクノロジーの解放」、つまり一般の人々には届かない所にあるような最先端のテクノロジーを、あらゆる人が使えるようにすることが実現できた、最初のサービスで、今でも誇りに思っています。
ただしこの需要が市場規模的に「海」だったかというと、実際は「湖」くらいだった。会社としてはさらに利益を上げ、成長し続けないといけません。
そこで、サーバー管理ソフト事業で得たお客様との繋がり、ソフトウェア開発力、販路などを活かして「さらに大きな隙間」として着目したのがメール配信セキュリティでした。
この事業もある程度は上手くいったのですが、リーマンショック時には会社が潰れそうになりました。「大きな海」を創り出せたわけではなかったんです。
次の手を考えていたときに、発生したのが東日本大震災。現在の新型コロナの流行ほどではないですが、「会社に来られない、家から働かなければいけない」という大きな社会変化、つまり「大きな隙間=海」が生まれた瞬間でした。
もし創業した1996年からその隙間を狙っていたとしたら、課題解決能力も足りないし、課題が顕在化するまでの15年で資金枯渇していたでしょう。
ですが15年の間に、さまざまなお客様の課題に向き合う力を蓄えてきたからこそ、目の前に現れた「大きな隙間」を埋められる力を持つことができました。
それを埋めるために邁進し、行きついたのが今のHENNGE Oneです。