経済・社会

2022.05.02 11:30

海洋問題に取り組む世界のリーダーたちが、パラオに集結して誓ったこととは?


レメンゲサウ前政権下では、海洋保護区を拡大したり、観光客に入国の際に珊瑚の保護を約束させるという世界初の環境保護誓約「パラオ・プレッジ」を展開したり、海洋環境先進国のイメージだったが、人々の生活改善へも目を向けて振り子を修正した形だ。

その背景にはコロナ禍で観光業と水産物輸出が大打撃を受けたことがある。そしてGDPの約7割を占めていた観光産業が失った経済効果をなんとしても補い、厳しい経済停滞から脱却することが急務なのである。パラオのような発展途上国においては特に、海洋環境保護と持続可能な水産資源の利用、ブルーエコノミーの実現には、理想と現実の間に切実なジレンマがある。

この太平洋諸国の窮状の余波は、日本にはマグロ輸入問題となって押し寄せるだろう。太平洋諸国はマグロ漁業と日本への輸出に高い関心を持っており、会議期間中、何度も「マグロによる経済成長」というフレーズを耳にした。

これらのマグロの輸入が日本の市場に与える影響はどうだろうか。日本では2020年末の改正漁業法施行に次いで、今年の12月までに水産流通適正化法の施行が待っている。この法律によって、漁獲証明制度が義務化され、いつどこで誰が漁獲し、誰が流通させてきたかという記録が辿れるようになる。

これにより、IUU漁業に由来する犯罪性のある水産物を市場から排除することが可能になり、より質の高い、持続可能性が担保された水産物を選べるようにもなる。

ところが、この法律が適用されるのは、当初、国内漁業のアワビ、ナマコ、シラスウナギと、輸入品のイカ、サバ、サンマ、イワシという、合計7種類にとどまっている。

IUU漁業由来の水産物が市場流通の3割にも及ぶと推計されている現在、また太平洋諸国からのマグロの輸入が拡大するとなると、日本は待ったなしでマグロやウナギなどの国際魚種に、ひいては全魚種にこの法律を適用させるべきではないだろうか。

コロナ禍が一段落し、ひさしぶりに開催された国際会議はエネルギーに満ち溢れ、世界中から再集結した仲間たちとの再会を喜び、誰もが笑顔で早口に近況の情報交換に余念がなかった。

毎晩いくつものレセプションを掛け持ちし、会議の合間には廊下やロビーや庭先で思い思いに打ち合わせを繰り返すという国際会議の日常も戻ってきた。この会議で海洋環境問題の解決と持続可能な社会への転換が火急の命題である事を再認識したのであった。

連載 : 海洋環境改善で目指す「持続可能な社会」
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文=井植美奈子

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