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2022.04.21 07:30

新CEOのもと、急成長路線に舵を切った米トイザらスの今

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私たちは1980年代に逆戻りしたのだろうか? トイザらスのマスコット・キャラクターである「キリンのジェフリー」が、巨額の借金を作り出した悪者たちをやっつけて、この物語はついにハッピーエンドを迎えるのだろうか? 

いま挙げた2つの問いを含め、複数の疑問に答えを出すために、昔を思い出してみよう。そのころ、ビデオゲームはほとんど普及しておらず、おもちゃと言えば、ログインするものではなく一緒に遊ぶものだった。玩具店の棚には、のっぽで人なつこいキリンのキャラクター「ジェフリー」が並んでいた。

だが、もう昔を思い出す必要はない。というのも、米国発の玩具小売企業トイザらスは復活を遂げただけでなく、年内に、全世界で多数の店舗を新規出店する計画を明らかにしているからだ。

トイザらスは2021年12月中旬、ニュージャージー州にある巨大ショッピングモール「アメリカン・ドリーム」内に大型旗艦店をオープンして、復活ののろしを上げた。2021年8月には、百貨店グループ「メイシーズ」とも提携を結んでいる

現在、トイザらスの経営権を握る投資会社、WHPグローバルの創業者であるイェフダ・シュミッドマン会長兼最高経営責任者(CEO)によれば、復活後の同社には、「かつてトイザらスを愛してくれた消費者たちのもとに、復活したブランドを届けるという非常に明確なミッション」があるという。

シュミッドマンはさらに、4月5日から7日にかけてローマで開催された世界リテール会議(World Retail Congress)で出席者に対し、このミッション達成のための基盤として、アジア、欧州、北米地域で、ハイペースで店舗を展開する構想を明かした。

このような強気の計画は、かつてのトイザらスの状況とは著しく対照的だ。2017年にトイザらスは連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請。子ども向け商品の小売大手として名を馳せた同社もこれで終わりかと思われた。

当時のデービッド・ブランドンCEOをはじめとする経営陣はこの破産申請について、同社の財務状況を改善し、再始動するための手続きだと述べていた。

破産申請後も続いた負のスパイラル


しかし、破産申請の前から、トイザらスは何年にもわたって下降傾向にあり、損失を計上していた。ライバルとの競争に敗れ、市場でのシェアを落としていただけでなく、2005年にプライベート・エクイティ・ファンドによるレバレッジド・バイアウト(LBO)で買収されて株式非公開になった際に負った、巨額の負債ものしかかっていた。

破産申請の後に訪れた2017年末のホリデーシーズンには、サプライヤー各社はトイザらスに対し、同社が企業間信用をもとにした破産後のつなぎ融資に支えられているとの確約を裏付けとして、商品を出荷していた。

だが、トイザらスは2018年3月に突然、融資コベナンツ(債務者側の義務に関する特約条項)を破り、米国内の全店舗を清算すると発表した。これにより、同社と取引があった業者は、総額数億ドル規模の損失を負うことになった。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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