避難民支援に関するカプリ・ホールディングスのアプローチには、多くの側面で目新しさがある。ラグジュアリーブランド企業の多くはこれまで、国連の難民支援機関である国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの団体に巨額の寄付を行う形を選択してきた。しかし、すでに存在している製品(新品や在庫品から回せる品物)を現物で寄付するやり方のほうが、より循環志向的なアプローチと言えるだろう。
さらに、構想を実現させるにあたり、Venlo Helps Ukraine、Autotrasporti Rutilli Adolfo、A Shop Without Cash Registersという、信頼に値する3つの団体および企業と提携したことも、このアプローチのカギとなるポイントだ。金銭的価値が非常に高い高級ブランドの新品の場合、輸送の際に多くの人の手を経由すると、これを絶好の機会と捉える悪人に目をつけられかねないからだ。また、ウクライナ国境で避難民たちに接する人たちにしても、純粋に善意でこの地域に駆けつけた人ばかりとは言えない。
一方で、今回の支援活動を皮肉めいた目で見る人もいるかもしれない。ヴェルサーチェはセクシーで露出度の高いドレス、ジミー・チュウは特にかかとの高いハイヒール、マイケル・コースは高級なカシミアのセーターで名高いという、各ブランドにまつわるイメージがあるからだ。
マーケティング面においても、避難民の背中に高級ブランドのロゴが躍るとなれば、これはリスクをはらんだ賭けだ。それでも、この賭けが吉と出れば、つらい日々を送るウクライナの人々に華やかな高級品を贈り、ささやかな癒やしを提供したブランドとして、長く記憶される可能性もある。
幸運にもこれらの高価な品々を援助として受け取った人に、わずかな時間でも喜びがもたらされるなら、それはファッションの持つ力の証と言えるはずだ。