JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は4日、株主に宛てた手紙のなかで、JPモルガンはロシアへの直接的なエクスポージャーについて「心配していない」としながらも、「長期的に約10億ドル(約1240億円)の損失を出す可能性がある」と認めた。
シティグループは先月、ロシア向けエクスポージャーが2021年末時点で100億ドル(約1兆2400億円)近くにのぼることを明らかにした。最悪のシナリオではその半分を失う可能性があるとしており、米銀のなかでは最大級の損失をかぶるおそれがある。
ロイター通信によると、ゴールドマン・サックスは2021年末時点でロシア向けに6億5000万ドル(約805億円)ほどの与信残高があるが、資産売却にともなう損失は「軽微」なものにとどまるとの見通しを示している。
各行のロシア事業解消には時間がかかるとみられ、エクスポージャーが大きい銀行は借り手側がデフォルト(債務不履行)を起こした場合の損失も膨らむことになる。とはいえ、ほとんどの米銀は2014年のクリミア併合を受けてロシア事業を大幅に縮小しており、エクスポージャー全体に占めるロシア向けの比率は非常に小さくなっている。
一方、欧州の銀行はロシア向けエクスポージャーが比較的大きく、ドイツ銀行は15億ドル(約1860億円)ほど、クレディ・スイスは17億ドル(約2110億円)ほどを抱えている。
国際決済銀行(BIS)の直近のデータによると、外国の銀行が保有するロシア向け与信残高は約1210億ドル(約15兆円)で、うち米国の銀行のものは計150億ドル(約1兆8600億円)弱となっている。欧州の銀行は合計で840億ドル(約10兆4000億円)ほどの残高を抱え、地域別でロシアに対する最大の貸し手となっている。
ロシアのウクライナ侵攻では銀行以外の金融機関も打撃を受けており、世界最大の資産運用会社であるブラックロックは、ロシア資産を組み入れたファンドで計約170億ドル(約2兆1000億円)の評価損を計上したことを明らかにしている。