トヨタとレクサスはつまり、何を狙っているかというと、この100年に一回の大変革の中で、今までの自動車を作り続けると同時に、「CASE」の開発に力を入れたり、「MaaS」にも移行すると言うことだ。
CASEは、コネクテッド、オートノモス(自動運転)、シェアード、そして電動化を意味する。対してMaaSとは、「Mobility as a Service」の頭文字であり、「サービスとしての移動機能」の意だ。つまり、移動手段を「モノではなく、サービスとして提供する」と言うわけだ。言い換えれば、自動車に対するニーズが「所有」から「利用」へと動いているということ。若い世代で「自動車離れが進んでいる」という指摘が端的に表している大きなトレンドと言える。
今回、フィーチャーする高級クルーザーも、そんな新フィロソフィの一貫だ。
3年前にLY650を発表した時に、「このヨットはレクサスの挑戦を象徴します。真の高級なライフスタイルのブランドを目指すためには、陸から海にも冒険する必要があるでしょう。ですから、海においても新しいモビリティの可能性を追求していきます」と豊田社長は言っている。
LY650は、トヨタマリンとMarquis Yachts社の合同チームで船の製造現場にトヨタ生産方式を導入し、生産性と品質の向上を図り、レクサスの『CRAFTED』と呼ばれる思想を高級ヨットという形で具現化した。
外観は丸みを帯びた船首や、豊かなボリュームを強調した船尾に優美な曲線をもつ、今までのヨットのイメージにはない特徴的なデザインになっている。流線型のあるフォルムや曲線美を継承し、フライブリッジクルーザーでありながら、レクサス製の車両に採用されるような流麗で高級感あふれるデザインのニュアンスを誇っている。クラス最大級のワイドビームを活かした迫力満点の船体形状は、ひと目で息を呑んでしまうほど独自の存在感を創り出している。
そして、その寸法に驚く。全長は約65フィート(20メートル)、幅6メートルというから、停泊させるのに必要な面積は120平方メートル。これは、広めの3LDKほどだ。このサイズでは日本で停められる場所はかなり限られている。ボートの航続距離は、何kmと言うより、満タンで何時間持つかと言うことなので、LY650の場合は、10時間持つそうだ。距離的に表現すれば、東京から神戸ぐらいまで行けると言うことだ。