経済・社会

2022.04.04 06:30

ゼロコロナ政策で月460億ドルを失う中国、成長率目標はどうなる?

Photo by Kevin Frayer / Getty Images

中国は今年の国内総生産(GDP)成長率の目標を、5.5%としている。そして、世界中のエコノミストたちは今、それが達成されるのかどうかで頭をいっぱいにしている。

だが、アジア最大の経済大国が世界全体に及ぼす影響については、成長率の目標よりも次の2つの数字の方が、はるかに大きな意味を持つと考えられる。それは──

1. 6200万人:新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために国内各地で実施されているロックダウン(都市封鎖)の対象となる人数
2. 460億ドル(約5兆6000億円):ゼロコロナ政策のための1カ月あたりの政府の支出(香港中文大学の宋錚教授の試算)

これらがどれほど大きな数か、考えてみてほしい。最初の人数は、主要7カ国(G7)のメンバーであるイタリアの人口(約6000万人)を上回り、フランスの人口(約6500万人)に近い。そして、2つ目はベネズエラのGDPに近い金額だ。

保健衛生や経済、地政学の専門家たちがゼロコロナ政策のさまざまな問題点について警告するなか、中国がこうした経済的コストに耐え続けなければならないのはすべて、習近平国家主席がこの政策にこだわり続けるためだ。

前出の宋教授(経済学)はブルームバーグなどに対し、習主席のこの政策による1カ月あたりの経済的コストは、おそらくGDPの3.1%程度になるとの見方を示している。さらに重要な点は、ロックダウンの対象となる都市が増えれば、マイナスの影響は今後、倍増する可能性もあるということだ。

世界では現在、原油その他の商品価格の高騰により、インフレ懸念が高まっている。さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めに転じ、それは長期的に続く可能性もある。世界の経済成長の減速が見込まれるなか、その成長をさらに脅かす“パーフェクトストーム”が到来したともいえるかもしれない。

そして、2022年を一層複雑にさせうる“評価しようのない”問題が、もうひとつある。それは、今年秋からの3期目の続投に向け、習主席が政策の優先事項をどのように変えるかということだ。
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編集=木内涼子

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