そんななか、木原誠二官房副長官は3月27日のテレビ番組で、「事実上、平和の番人であるべきロシアが自分の領土への意欲を露骨に見せて国際法違反した。こういう状況のなかでの拒否権をどう考えるか、考えてもいい」と語った。林芳正外相も26、27の両日にオンライン形式で行われたTICAD(アフリカ開発会議)閣僚会合で、国連安保理改革の早急な実現を訴えた。これも、ロシアによる拒否権行使が念頭にあったとみられる。
2人の発言は至極もっともと言えるものだが、実現の可能性はほとんどない。木原氏は、国連改革について常任理事国の追加、非常任理事国の追加、拒否権の行使の一部制限を挙げ、「3つのアイテムをバランスよく改革していきたい」と語ったが、日本政府は従来、拒否権の取り扱いについては「将来に向けて検討する」として、事実上言及を避けてきたのが現実だ。
「P5(常任理事国の5カ国)の拒否権を制限しろ、新たな常任理事国にも拒否権を与えろ、などと言えば、P5は決して応じない」(外務省関係者)からだ。別の関係者も「紛争当事国になった場合は拒否権を使わせない、という主張もあるだろう。でも、そんなことをすれば、米国がアフガニスタンやイラクに攻め込んだ場合に国連から攻撃されることになりかねない。米国は絶対にそんな提案を飲まない」と語る。
日本政府は戦後、長らく国連安保理改革を推進してきた。一番盛り上がったのが、1990年代末から2000年代初めにかけての時期だった。外務省の資料によれば、2003年後半から、国連創設60周年の2005年に国連改革を行うべきだという機運が徐々に高まった。
日本、ブラジル、ドイツ、インド(G4)が連携し、2005年7月には、G4を中心に作成した安保理改革決議案を国連総会に提出した。当時の案は、常任理事5カ国に、新たにG4とアフリカ枠2を加えた6カ国を加えて計11カ国にするなどとした案だった。