チェンジメーカー育成を目標に掲げるユナイテッド・ワールド・カレッジ ISAKジャパン。「100人ファウンダー構想」プロジェクトは、どのような好循環を生んだのか。
「いちばんいいお金の使い方だった」
ビジネスで成功を収めたリーダーたちが、こぞってそう言い切る場所がある。長野・軽井沢町のユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン(以下、UWC ISAK)だ。
UWC ISAKはチェンジメーカーの育成を目標に掲げる私立の全寮制インターナショナルスクールだ。約80カ国から来た高校生たちが衣食住を共にしながら学ぶ。
UWC ISAKというと、全生徒の約7割に返済不要の奨学金を給付している点やカリキュラムの独自性、代表理事・小林りんが語るビジョンに注目が集まりがちだ。しかしその裏には、小林をして「この人たちなしに本校はない」と言わしめる100人の発起人(ファウンダー)の存在がある。その顔ぶれは企業経営者や起業家、外資系金融の敏腕トレーダーなど多様だ。
長野県軽井沢町にあるUWC ISAK本校の施設。日本の伝統的な建築美を取り入れながら、軽井沢の自然環境と調和するよう設計されている。
UWC ISAKでは、理事会と評議会のメンバー30人のうち9割近くをファウンダーが占める。彼らに求められるコミットメントは高い。理事会は年5回あり、9人の理事は校長を除く全員がファンドレイズやガバナンスなどの分科会を主幹する。評議委員26人は年3回の会合と所属する分科会への参加が必須で、やむをえない欠席は年1回まで。しかもコロナ禍以前は海外在住者も含めて原則軽井沢集合だった。
多忙な人たちである。時間の確保だけでも至難の技だろう。それでも皆が顔をそろえ、企業経営者はガバナンス、コンサル出身者は教育の効果測定、弁護士はリスク管理、外資系金融出身者はファンドレイズなど、各分野のプロたちが経験で培ったスキルや人脈を惜しげもなく提供する。
「皆さんの時給を足したらいくらになるのか、怖くて計算できません」
そう笑う小林だが、実はこの「100人のファウンダー構想」は、資金調達が頓挫した末に生まれた苦肉の策だった。