欧州各国はここ数週間、新型コロナウイルスの流行を理由に実施していたさまざまな規制を緩和しており、国境を越える人々の移動はよりスムーズになってきている。
欧州委員会は先ごろ、ウクライナを離れる人々向けの情報を更新。可能であれば渡航に必要なパスポートなどを携帯するよう促したが、同時に、新型コロナウイルスのワクチン接種証明書をはじめ、そうした書類を持っていないことが、欧州連合(EU)加盟国への入国における「妨げになってはならない」と付け加えている。
ウクライナから避難する人の3分の2近くが入国しているポーランドの当局関係者は、国境を越えてくる人たちの健康状態について最も懸念しているのは、新型コロナウイルスの感染の有無ではなく、幼い子どもたちの低体温症だと話している。
一方、世界保健機関(WHO)は、ウクライナの新型コロナウイルスの感染者は今後、“間違いなく”急増するとの見方を示している。同国の接種率が、欧州で最も低い水準にとどまっているためだ。
各国の新型コロナウイルスワクチンの接種状況を追跡するブルームバーグの「ワクチントラッカー」によると、同国の人口のうち、2回(種類によっては1回)の接種を完了した人の割合は約36.7%となっている。
「ロシア製」ワクチンで混乱
ロシアの攻撃が開始される前から、ウクライナの保険当局は接種率を引き上げることに苦労していた。原因は主に、“忌避派”が多いことだ。米ニュースメディア、コーダストーリーによると、ウクライナ国内のワクチンを巡る分断は、ロシアのプロパガンダによってあおられていたという。
ロシア政府は昨年、自国で開発したワクチン「スプートニクV」の接種プログラムをウクライナ東部のドンバス地方で開始。だが、ウクライナ当局は欧州から供給を受けたワクチンの接種を呼び掛けた。
その後、ウクライナ政府は(欧州での承認を受けていなかった)ロシア製ワクチンの接種を禁止。この対応についてロシアの政府系メディアは、「ウクライナ政府は自国民を、政治的目的のために“大量虐殺している”」と非難していた。