ビジネス

2022.03.21 18:00

自動車は、まだまだこれから面白い。小川フミオが見いだすわくわくするような未来

日産自動車の「アリア・シングルシーター・コンセプト」は「日産アリア」のパワートレインをレーシングカーのシャシーに搭載

自動車づくりが大きな変革を求められる現在の情勢は、ともすると閉塞的にも感じられる。そんななか、ジャーナリストの小川フミオはわくわくするような未来の兆しも見いだす。


大変革時代を迎えているといわれる自動車界。2020年代には、いきなりすべての新車が、バッテリーで駆動される電気自動車になってしまうのか。そこはじっさいのところ予断を許さない。

ただし、ちょっと明るい材料も。自動車メーカーは懸命に未来の“夢”をつくろうとしているようにみえる。

最近、さまざまなメーカーがユニークなコンセプトモデルを発表している。共通しているのは、なんだか妙に楽しそうな雰囲気だ。一時期は、コンパクトなサイズの、まるで無印良品のようなEVのコンセプトモデルが多かったのと対照的。このクルマって実際に生産されたら、どんな乗り味なんだろう、って想像する楽しみを与えてくれるモデルが発表されている。

レクサスは「ROVコンセプト」を21年12月初頭にお披露目した。ROVとはレクサスによると「recreational off-highway vehicle」の頭文字なんだそう。


レクサス「ROVコンセプト」は鋼管フレームのボディに水素を燃料とする1リッターエンジンを載せている

水素を燃料とする新世代の1リッターエンジンを搭載。どんなところでも走破するという走行性能の高さが謳われる。といっても基本はドライブを楽しむためのファンカー。1960年代に米西海岸で砂漠を走るためにVWビートルのシャシーを使ってつくったデューンバギーを連想させる、レトロ感覚があるのもよい。

スピンドルグリルをはじめ、ドライバー中心に操作類を配した「Tazna」コンセプトなど、最新のレクサス車に感じるデザインランゲージが採用されている。どんなふうに走るのか。ユニークな着想でつくられた高級なデューンバギー。市販してほしいというひとも、少なくないのでは。

やはりオフロードをテーマにしつつ、ぐっとエレガントなアプローチを せてくれるのが、これも12月初旬に公開された「プロジェクト・マイバッハ」。メルセデス・ベンツのヘッド・オブ・デザインを務めるゴーデン・ワゲナーが、11月28日に41歳の若さで惜しまれつつ他界した米のファッションデザイナー、ヴァージル・アブローとともにコンセプトを練りあげたというモデルだ。電気で走る2人乗りのオフロードテイストのクーペ。スタイリングコンセプトもユニークである。


LVでメンズ部門を率いていた故バージル・アブローがプロジェクトに参画したというメルセデス・ベンツの「プロジェクト・マイバッハ」

ストリートファッションをハイファッションに取り込むなど、あたらしいエレガンスを創造したと評価の高かったアブロー。ルイヴィトンのメンズアーティスティックディレクターを務め、21年12月に最後のコレクションがマイアミで発表され話題を呼んだのも記憶に新しい。アブローはSUVにもあたらしいデザインランゲージを持ちこんで、機能やスタイルをあたらしい次元にひきあげてくれた、とメルセデス・ベンツ。これ、売れそう。
次ページ > アストンマーティンのスーパー(x2)スポーツカー

Text by Fumio Ogawa

この記事は 「Forbes JAPAN No.090 2022年2月号(2021/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事