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2022.03.21

NYタイムズで優秀商品を受賞「生理の貧困」を救う吸水ショーツ

エチオピアでボランティア活動をするジョイ・ベク代表(右)

ここ数年、経済的な理由などで生理用品を入手しづらい「生理の貧困」を解決する取り組みが世界的に増えている。生理の貧困は途上国だけでなく、日本を始めとする世界中で解決すべき問題として注目され始めているのだ。


1枚売れたら1枚エチオピアに


コリア系米国人のジョイ・ベク(Joy Baik、47歳)は自身が運営する米国企業Trendixで生理用の吸水ショーツを開発し、エチオピアなどの途上国、そして先進国における生理の貧困問題を解決するために奮闘している(日本総代理店はKAMSA)。

具体的には米国や日本で売れた吸水ショーツと同じ枚数をエチオピアの女性に支援する取り組みを行なっている。吸水ショーツとはナプキンやタンポンが無くても、経血を吸収できるように作られた下着のことだ。

ベクが吸水ショーツの開発を手掛けるようになったきっかけは、2019年のエチオピア訪問だった。韓国の国立国際教育研究所(国内外の教育協力・支援のための公的機関)から派遣されていた友人を訪ねた彼女は、英語などの授業のボランティアを行いながら、現地で必要とされている支援について調査した。

コラという村のゴミの埋め立て地では、親から物乞いを強要され、学校に行けない多くの子どもたちのために、勉強を教えるボランティアを手伝った。想像を絶する貧困の中でも、ベクが最も衝撃を受けたのは女生徒たちの現状だった。


2019年にエチオピアを初訪問し、支援を決心した

初潮を機に退学する子どもたち


「男子に比べて女子が圧倒的に少ないのです。現場の人たちに話を聞くと、生理がきっかけで退学する女子が少なくないことを知りました。エチオピアの貧困層の女性は生理ナプキンを買えず、代わりに使うものとして古い布はまだマシな方で、樹木の皮や古いマットレスの破片、拾った鳥の羽などを使っていました。もちろんこのようなものでは経血の漏れを防ぐことはできず、その羞恥心で学校を辞めてしまうのです。不衛生で健康にも負担になります」(ベク氏、以下同)

エチオピアは内陸国であるため、支援物資の搬入が困難な地域だ。現地のボランティア団体は外国から入るナプキンを高額で仕入れ、配布していたが、多くの女性に毎月訪れる生理をカバーするには限界があった。

ベクは当初、洗って使えるシリコン製の月経カップ(経膣に挿入し経血をキャッチするカップ)の支援を検討した。しかし月経カップはトイレで都度、清潔に洗浄する必要があるが、エチオピアではそのような環境が整っていないこと、また、心理的なハードルが高く普及が難しいと判断。ナプキンやタンポンがなくても経血を吸収するショーツの支援と普及にたどり着いた。吸水ショーツは洗濯をして繰り返し使うことができるだけでなく、簡単に着用できるからだ。

「エチオピアは乾燥した熱帯地域なので洗濯後、すぐに乾くという利点があり、まずは一人最低2枚の寄付を目指しています」
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Text by 金香清 KIM Hyang-chung

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