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2022.03.21 11:00

NYタイムズで優秀商品を受賞「生理の貧困」を救う吸水ショーツ

藤吉 雅春

吸水ショーツは利便性が高いが、使い捨てナプキンなどに比べると、初期費用がかかるという障壁がある。

「そのため、販売の市場は、女性が健康や環境に気を配る余裕のある成熟した国である必要があります。結果、まずは米国、次に日本を市場として選びました。繰り返し使える吸水ショーツの普及は先進国での生理の貧困の解決にもなると考えています。使い捨ての生理ナプキンに1カ月1000円かかるとすると、年間12000円の費用がかかりますが、吸水ショーツは適切に使えば何年も繰り返し使うことができます。

また吸水ショーツは多くの女性の健康面においても利点があります。使い捨てナプキンには化学物質(ポリエステル、レーヨンなど)が使われているため、綿が主成分であるショーツがより肌に優しいからです。さらには石油由来のゴミを減らすことができるため、環境にも優しい商品と言えます」

エチオピアに生産工場を


「現在の目標は、エチオピアにショーツの工場を建てることです。そうすることで中間コストを抑えることができます。エチオピアにはアクセサリーなどを手工業で作って生計を立てる女性が多くいます。彼女たちをフェアな形で雇用し、ショーツを製造し、アフリカで販売・寄付をする継続的な支援を目指しています」

生理の貧困は日本も例外ではない。2021年4月6日にNHKで放送された『クローズアップ現代』によると「学生の5人に1人が生理用品の入手に苦労している」という。番組ではティッシュペーパーやラップを代替品として利用している十代の少女の姿が紹介された。生活苦から生理用品を買えないケースもあるが、ネグレストなどの家庭環境が原因で入手が困難な少女たちも少なくない。ベク氏は途上国だけでなく、先進国内での支援のためにショーツの寄付を企業へ呼びかけることも計画している。

ベクは生理用品の改革とともに、生理をタブーにしない試みも同様に必要なことだと話す。

「個人的な話になりますが、10代の息子のクラスで女子生徒が初潮を迎え、ズボンが汚れ立てずに泣き出してしまうことがあったそうです。男子生徒たちはそれを見て笑っていたそうですが、息子は自分のシャツを脱いで隠してあげて、保健室まで連れて行ったそうです。息子は妹に『どうして笑うのかわからない。恥ずかしいことではないのに。幼稚だ』と話していました。その話を聞いたとき、私は感動のあまりキッチンで泣いてしまいました。それ以来、息子は学校の人気者になりました」

Text by 金香清 KIM Hyang-chung

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