有名ブランドが続々参入、急成長のデジタルファッション業界

2月にロンドンで発表された「Roksanda」のコレクション(Getty Images)

「デジタルドレスを、あなたは買いますか」。そう尋ねたのは、英国の後払い決済サービス「クリアーペイ(Clearpay)」とコラボレーションしたブランド「ロクサンダ(Roksanda)」だ。両社は、2022年ロンドン・ファッションウィークの開催中に、限定コラボデザインの一環として、NFT(非代替性トークン)シリーズを発表した。

このドレスは、ロクサンダによる22年秋冬コレクション・ファッションショーの締めくくりとして実物が披露されたものだが、同公式ウェブサイトでは、3Dレンダリング版なら1点25ポンドで、メタバース上でウェアラブルデジタル資産として利用可能なオプション付きの場合は1点5000ポンドで購入もできる。ロクサンダは、このNFT作品をもってメタバースに参入し、急成長する市場におけるチャンスをとらえようとしている。

ファッションメディア「Business of Fashion(BoF)」の傘下サイト「BoF Insights」によると、NFTの売上は2021年第3四半期に107億ドルに上り、前期比で8倍を超えた。これは、デジタル資産の購入・所有に対する需要が急拡大している証しと言える。

この勢いをけん引しているのは若いオーディエンスだ。同サイトの調査では、米国消費者のうち72%が、過去12カ月で一度は仮想空間にアクセスしたことがあると答えた。また、消費者の50%が、デジタル資産の購入に関心を示している。

BoF主催のパネルディスカッションでは、複数のパネリストが、メタバースの誕生をインターネットの到来になぞらえた。また、ファッション業界がeコマースの波に乗り遅れたことに触れ、今度はそうした事態を何としても避けたいと考えていることを示唆した。

デジタルファッション


デジタルドレスを買いたいと思う人がいるのは、なぜだろうか。例えば、ソーシャルメディアでの利用が考えられる。購入したアイテムを、フィルターやAR(拡張現実)を使って「着用」し、写真を投稿して披露することができるからだ。

しかし、デジタルファッションの使い道として最もわかりやすいのはゲーム界だ。プレイヤーは、自分のアバター用にデジタルファッションを購入し、それで自分自身や個性を表現する。デジタルファッションの成功に最も適しているのは、ゲーマー用のデジタルファッション・プラットフォームかもしれない。

また、デジタルファッションは通常、若い消費者層が対象だ。彼らはデジタルネイティブとして育ったので、デジタル上にしか存在しないアイテムにも、躊躇せずにお金を出す。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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