ファッションとゲームがこのように交差するのは、いまに始まったことではない。例えばルイ・ヴィトンは2019年に、米ゲーム会社ライアット・ゲームズが開発した「リーグ・オブ・レジェンド(略称:LoL)」とコラボした商品を発表した。
また、グッチは2021年、ゲームプラットフォーム「ロブロックス」で仮想空間を公開した。さらに、英国ファッション協会は2021年11月、ロブロックス上でバーチャルアワードセレモニーを開催し、メタバース用デザインにファッションアワードを授与。コメントや「いいね」などのインタラクション数は120万を超えた。
急成長するデジタルファッション市場
英国ファッション協会のイベントで、同会のキャロライン・ラッシュ最高経営責任者(CEO)は、明確なメッセージを発信した。デジタルファッションを既存ビジネスにどう応用できるかを思案中のファッションブランドに向けて、「ただ傍観して、自分たちには関係ないと考えてはいけない」と述べたのだ。
ラッシュは、私たちが所有するファッションアイテムの10%から15%が、将来的にはデジタルファッションになる可能性があると予測した。統計サイト「スタティスタ」によると、世界におけるアパレル市場全体の規模は約1兆5000億ドルだ。それを踏まえると、ラッシュの予想が当たった場合、デジタルファッションの前途はきわめて明るいものになりそうだ。
手持ちのファッションの10%から15%が、メタバース用のデジタルアイテムになると言われても、にわかには信じられないかもしれない。しかし、デジタルファッションへの関心が高まっていることに関しては、説得力のある理由がいくつかある。
まずは、ファッション業界における生産過剰が生態系に破壊的な影響をもたらしていることが、ますます広く知られるようになっている。そうしたなかで、デジタルファッションを購入することは、無駄や過剰消費の削減を促す可能性がある。
さらに、デジタルファッション協会(IDF)のリアン・エリオット・ヤングCEOは、デジタルファッションの利用がデザイナーにとって役に立つ可能性についても強調した。デザイナーはデジタルファッションを活用することで、実際の製品を作る前に、新しいコレクションへの人々の反応をいち早く把握できるというのだ。
多くのブランドはいまだに、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに起因した、製造とサプライチェーンの混乱に苦労している。こうしたなかでデジタルファッションは、(従来の衣類製造に依存するやり方とは異なり、)愛用してくれる顧客層に向けて、新しいアイデアやエキサイティングな製品ローンチをいち速く、より簡単に届ける手段になりうるのだ。