スティーブ・ジョブズの素顔:STORY05 ノーラン・ブッシュネル

72年に世界初のゲーム会社「アタリ」を創業した。

ジョブズ急逝から1年後の2012年本誌11月号にて、苦楽をともにした仲間たちが、“ありのままのジョブズ”を語ってくれた。
今世紀最高の経営者の素顔とは。7つのエピソードを紹介する。


STORY 5 ノーラン・ブッシュネル (アタリの創業者。1974年にジョブズを雇う)

スティーブについて、私が最も印象的だったのは、彼の「勢い」と「集中力」でした。スティーブ以外に、定期的に徹夜をして、机の下に丸くなって寝ている人なんて、見たことがありません。世の中、成功する秘訣は「運」と「タイミング」という人もいます。でも、誰よりも一生懸命に努力する気さえあれば、運のかなりの部分を引き出せると思うんです。

スティーブとは、なんというか、哲学的な関係でしたね。彼は壮大なアイデアについて、そして壮大なアイデアがどうやって生まれるのか、を語るのが好きでした。プロダクトの生み出し方や、プロダクトが発売されるべきタイミングをどのようにして判断するか、といったことです。

80年代初頭、私はパリに大きな家を購入し、シリコンバレーの友人たちを招き、パーティを開きました。たくさんの食べ物が振る舞われ、派手に着飾ったゲストのなかに、スティーブもいました。彼はアップルを立ち上げるために76年にアタリを辞めていましたが、来てくれたのです。リーバイスのジーンズをはいていたのは、彼だけでしたけどね。その翌日、パリのホテルで僕はコーヒー、スティーブはいつも通り紅茶をすすりながら、クリエイティビティの重要性について、話したことを覚えています。

ちょうど彼は、AppleIIIが商品としても終わりを迎えていると感じていて、満足をしていなかった。トラックボールや、ねずみのようなポインティングデバイスなど、スクリーンのなかで「小さな手」のように使えるものがあったらいい、と話していました。それが、まさに「マウス」として形になったのです。

彼に最後に会ったのは、亡くなる約1年前。すごく、すごく痩せてしまっていたけれど、弱々しさといったものをまったく感じなかった。むしろ、彼らしい強さを感じた。「こいつ(病気)に勝てる気がしているんだ」。そんな言葉が忘れられません。

コニー・ギリエルモ=インタビュー 山崎正夫=イラスト 徳田令子/アシーマ=翻訳

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