失敗するのは当たり前、でもだから面白い。ジェームズ・ダイソンの仕事論

ダイソン社創業者 ジェームズ・ダイソン Larry Busacca / Getty Images

紙パック不要で吸引力の落ちない掃除機、羽根のない扇風機、パワフルな風量のドライヤ──。家電製品の常識を変えたダイソン社の製品には、創業者ジェームズ・ダイソンさんの徹底したこだわりが貫かれています。

最初に世の中に送り出されたのは、掃除機。それまでの掃除機にはない斬新なデザインと、サイクロン(遠心分離式)という新技術で、家電の世界に旋風を巻き起こすことになりました。

この画期的なプロダクト開発の指揮を自ら採ったのが、ダイソンさんでした。

私の人生は失敗の連続


1947年、イギリス東部ノーフォークの生まれ。ダイソンさんは、王立美術大学で工業デザインとエンジニアリングを学び、在学中に友人の会社に入ります。

高速の軍用シートトラックの開発に成功。仕事はとてもうまくいっていたのですが、7年で会社を離れてしまいます。以前行った私のインタビューでは、こう語っていました。

「軍のためではなく、実際に自分で使えるものをつくってみたかったんです。人々が親しみを感じるような商品の開発に携わりたかった」

こうしてダイソンさんが挑んだのが、ゴミを収める紙パックを使用せず、吸引力が衰えない「デュアルサイクロンテクノロジー」と呼ばれる遠心分離技術の開発でした。原点は、自らが使っていた既存の掃除機への不満だったといいます。

当時使っていた掃除機は、使っているうちにどんどん性能が低下していったのです。掃除機を分解してみると、紙パックがゴミで目詰まりして、吸引力の低下を起こしていることに気づきます。

その解決法を探し求めていたある日、製材工場の屋根に備え付けられていた、木くずと什器を分離するサイクロン装置を見てひらめいたのだといいます。

しかし、待っていたのは、度重なる挫折でした。5年の歳月と5000台以上の試作品づくりの末に、新技術の開発に成功します。

1993年にダイソン社を設立すると、発売からわずか1年半でイギリスでのベストセラー掃除機になりました。いまでは、世界67カ国で製品を販売。ダイソンさんは、イギリスで最も成功した起業家の1人となりました。
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文=上阪 徹

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