失敗するのは当たり前、でもだから面白い。ジェームズ・ダイソンの仕事論

ダイソン社創業者 ジェームズ・ダイソン Larry Busacca / Getty Images


「なぜイギリスが立派な国になれたのかといえば、新しいモノをつくろうというクリエイティブな志向があり、モノを実際につくるエンジニアやデザイナーがいて、その結果、生まれたプロダクツを世界が受け入れてくれたからです。経済的にも文化的にも、世界の他の国がつくれないようなモノづくりの力を持つことが、実は何よりも大切なのです」

インタビューのなかで興味深かったのは、ダイソンさんの自宅がきわめてミニマリズムの家だったことです。

「自分が欲しいのは、機能も性能も良くて、デザインも優れている製品。でも、実はこれはとても難しい注文で、私の要望に応えられる製品はなかなかない。そんなわけで、家にはほとんどモノがないのです」

例えば、衣類を入れるためのチェストひとつとっても、気に入ったものでなければ決して買わないと言います。

「収納家具には、いいモノが少ないのです。だから以前の家では、衣類はすべて部屋の隅に直接、積まれていました」

仕事にも生活の場にも強いこだわりを持つダイソンさんですが、その開発意欲は年齢とともに衰えるどころか、むしろ年々強まっているといいます。

「まわりにはクリエイティビティに溢れ、才能に溢れるエンジニアがたくさんいますからね。彼らに囲まれていると、とてもではないがリタイヤなんてする気になれない。だって、楽しくてしょうがないのだから。ただ、ついつい自分も若いつもりになってしまうから、鏡を見てショックを受けることもよくあるのですが(笑)」

自らつくってみたいものは、まだまだたくさんあると語るダイソンさん。

「もっともっと、素晴らしいデザインのモノをつくりたいですね。また、電気モーターを改良して、いままで不可能と思われていた製品をどんどん出していきたい。重要なキーワードになるのは『省エネルギー、軽量、小型』です。より効率的で、より少ない素材、少ない電力で動くモノをつくる。難しいと思いますよ。でも、だからこそ面白いと思うのです」

新しいモノをつくるのは、大変なのは当たり前、失敗だって当たり前、でも難しいから面白い。画期的なダイソンの製品群は、そんなスピリッツから生まれていたのです。

連載:上阪徹の名言百出
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文=上阪 徹

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