その際、衰退する北海道経済を観光産業によって再起動させようと、冬季五輪という世界的なイベントを「アジア最高峰、世界屈指のスノーリゾート」形成に向けたインフラ整備に活用すべき、という考えを強調した。例えば、ICTを活用した、観光客にも超高齢社会にも対応する新たな交通体系の実現やバリアフリー化の促進といったことだ。
また、北海道には、他のアジア地域にはない雪や冷涼な気候、豊かな自然や歴史文化、そして食文化という強力な観光資源があり、スポーツと複数の観光資源を組み合わせる、例えばスポーツx雪x文化x観光といった、ハイブリッドな観光商品の造成を継続していかなければならないとした。
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2026年のための計画は、大部分が2030年大会招致の計画に引き継がれたが、その間に起きた出来事や環境変化を受けて、持続可能なオリンピック・パラリンピックのあり方について改めて検討し、内容が一部見直されることになった。
SDGsの目標年でもある「2030年」
その際に提言したことの一つが、「クライメート・ポジティブ」な大会のアピールだ。
2030年以降の五輪には「温室効果ガスの削減量が排出量を上回ること」が求められている。また欧米では、例えばアマゾンが命名した「Climate Pledge Arena(気候誓約アリーナ)」のように、スタジアム・アリーナの建設や改修においても、すでに徹底した取り組みがなされている。
実は札幌市は家庭における一人当たりのCO2排出量が多い。再生可能エネルギー利活用の社会実験や新たな環境技術の導入、森林等の自然環境保全を推進し、例えば2030年までに温室効果ガス排出量を2016年比で55%削減、2050年までに実質ゼロといったような成果をあげることができれば、札幌発の「環境レガシー」を道内、国内、そして世界に広めることができる。
最大の懸念はコストと経済効果。開催経費は一体いくらかかるのか?
『2030北海道・札幌オリンピック・パラリンピック冬季競技大会概要(案)』(編集・発行:札幌市スポーツ局招致推進部調整課)を基に作成
そして、改善されたポイントをもう一点あげるとするならば、何といっても注目度の高い、コストと経済効果についてであろう。
開催経費は主に、施設整備費と大会運営費から成るが、当初案では800〜1400億円とされていた施設整備費が800億円に、2300億円とされていた大会運営費については2000〜2200億円に見直された。また、施設整備費については、国の交付金等の活用により、札幌市の実質負担額は800億円のうち450億円と試算されている。
施設整備については既存施設の改修のみとし、大会のためだけに新たな施設を建設することはないという。また、大会運営費については民間資金による収入、すなわちIOCの負担金やスポンサー収入、チケット収入といった組織委員会の収入でまかない、原則、税金を投入しない計画とされた。