主催者であるアトム代表の青井 茂は、藤元のアート活動を長く知る理解者でもある。
「三菱地所には提供できる空間はあるけれど、出せる運営予算には限界がある。誰か運営出来る人がいれば実施できるということで、青井さんをご紹介し、三者で1年半続く企画を練り、実現に至りました」

「ソノ アイダ #新有楽町」第1期の展覧会にて。手前の彫刻が森の作品、壁面のペインティングが藤元の作品(筆者撮影)
さらにこのプロジェクトには、電動工具のBLACK+DECKER、DEWALTなど4社が協賛している。ここでは、制作に必要な作業台を作ったり、展示のための設営をするのも参加アーティストの仕事。藤元は、「必要なものは自分たちで作ればいい。ただ自分の作品を作るだけでなく自分の『場』も作れる人を選んでいる」という。
「隙間がない」都市への挑戦
自身もアーティストでありながら、コーディネーターのように動く藤元と三菱地所の出会いは、2020年。同じく有楽町で、テナント入れ替えのタイミングを利用して「ソノ アイダ #有楽町」を開催した。
当初1カ月間半の予定で、2つの企画展(2021xANREARAGE展/副産物産展)を実施。アートにより街に賑わいがもらされ、期間延長となると、「それなら、アーティストのいる風景を見せたい」という藤元のアイデアでアーティストスタジオ(ARTIST STUDIO ACTIVITES)を実現。話題を聞きつけて三菱地所の社長も見学に訪れた。
その後、再び「ソノ アイダ」を展開すべく、“路面”の空き物件が出るのを待った。不動産業といえば、賃料が売り上げの軸の一つである。「そんななか、長年の街づくりの経験から賃料とは別の価値観で話ができ、この無茶を受け入れている三菱地所や、実際にリスクを取っているアトムさんが面白い」と藤元は言う。

(写真=ソノ アイダ提供)
空間、資金、物資、クリエイティビティ、ネットワーク。持ち得る者がそれぞれを持ち寄り、新たな価値を生み出すという複合的な企画は、「東京は隙間がない」と言う藤元の、都市への挑戦でもある。
「一等地を借りるのは、ハイブランドやグローバルショップ、チェーン店でないと無理。そうして経済合理性を突き詰めると、最適化、均質化され、安心感はあるけれど、どこも同じような街になってしまう。でも、都市は複層的に構成されているので、観察すれば必ず隙間がある。それをアーティストが見つけて大胆に活用する事例は世界では珍しくない」