BOSEには、自動車のノイズを消すことを目的とした、もうひとつのアプローチが異なる技術もある。それがBose Engine Harmonic Cancellationだ。
こちらは自動車のパワートレイン(エンジンを中心とする駆動基幹部)が発する不快なノイズを抑える技術だ。次数成分と呼ばれる、エンジンが駆動することにより生まれる低周波の「こもり音」を、Bose RNCと同じように車載サウンドシステムから、人間の耳に聞こえない音を出力して、耳もとの位置で消音する。Bose EHCは2009年に日産のフーガがこれを初めて搭載した。
このほかにも自動車のエンジンの特定音域を増幅して「魅力的なエンジンサウンド」を付与するBose Engine Harmonic Enhancementの技術も、2014年から提供を始めている。ボーズではこれら独自のドライブ体験を向上するサウンド技術のパッケージを「Bose Active Sound Management」と総称して、世界の自動車メーカーに提供する。新しいBose RNCの技術もここに加わる予定だ。
今後「自動車のためのノイズキャンセリング技術」はドライバーが運転時に抱える負担やストレスを軽減することにつながるだけではない。「静かなクルマ」に乗車できる体験はタクシーやリムジンの付加価値サービスとしても歓迎されるだろう。従来、自動車の低ノイズ化のために組み込まれてきた防音・吸音用途のパーツも必要なくなるため、自動車の軽量化に結びつき、引いては燃費を下げる効果をもたらすことも期待できる。
取材に協力いただいたボーズ・オートモーティブ合同会社の担当者。右から鈴木玄氏、大澤辰夫氏、高岡朗氏、高綱浩仲氏
連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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