チャイムがIPOを延期したのは、融資や投資機能を含む新たなプロダクトのリリースに注力しているためだと、その人物は述べている。目標とする評価額は変わっていないという。
既に上場したフィンテック企業の株価は、2021年10月下旬から概ね約40%下落しており、Block(旧スクエア)やペイパルなどの株価は約60%下落している。しかし、チャイムのIPO延期の決定は、株価が暴落し始める前に行われていたとその人物は主張した。
チャイムの広報担当者は、フォーブスのコメント要請に応じていない。
2013年設立のチャイムは、月々の手数料や当座貸越手数料が無料の当座預金を提供しており、伝統的な金融機関に対抗する「チャレンジャーバンク」として、特にアメリカの低・中所得層から強い支持を得ている。同社は、昨年8月に250億ドルの評価額で11億ドルを調達していた。
チャレンジャーバンクは、昨年も急速な拡大を続けたが、パンデミックの影響でEコマースやオンラインバンキングが急激に増加した2020年に比べると、その成長ペースは減速した。2021年のチャイムの収益は10億ドル近くに達したが、前年はおよそ6億ドルだったと、事情に詳しい人物は述べている。
2020年の収益は、2019年の3倍に伸びていた。チャイムの競合でニューヨークに本拠を置くCurrentも急成長しており、登録ユーザー数は2021年に約50%、2020年には200%以上増加した。Currentは現在、370万人の登録ユーザーを抱えている。
フィンテック企業の多くはパンデミックが始まって以来、詐欺行為に悩まされており、レンタカー会社のAvisやHertzなどは不正を防ぐために、2021年にチャイムとCash Appのカードの使用を禁止した(チャイムは、レンタカー会社は誰に車を貸すかについてもっと慎重になる必要があると述べている)。
また、ロビンフッドは不正行為に対抗するため、フィンテック企業と提携している多くの中堅銀行を含む金融機関からの送金を禁止している。詐欺の問題はチャイムのIPOのタイミングに影響を与えてないと、同社の業務に詳しい人物は話した。
フィンテック企業の株価が低迷する中で、投資家はIPOを目指す企業の評価額を引き下げようとしている。ここ最近の株安は、2021年に過去最多のフィンテック企業のIPOを記録した市場にさらなる冷え込みを与えている。