疾患や悪性化に深く関与しているマイクロRNAを尿から高効率に捕捉する技術を活用し、独自のデバイスを開発。たった1mlの尿で、高精度でがんを検出することができるという。22年2月には、健康診断でのリスクチェックとして、卵巣がんおよび肺がんの検査サービスを提供開始する予定だ。
大和企業投資の仙石翔は、20年6月のシリーズAラウンドでCraifにリード投資。21年11月のシリーズBでも追加出資を行った。仙石が投資した理由とは。
仙石:個人的なことですが、僕は健康診断の血液検査が再検査になりやすくて、注射がすごく苦手なんです。それで、マイクロニードル(刺しても痛みを感じない針)の技術も進んでいるけれど、そもそもほかの手段で検査できないのかとよく考えていました。だから、社内の別の投資チームにCraifの存在を教えてもらったときは感激しましたね。それで、話を聞いたその日のうちに窓口に問い合わせを入れたんです。ただ、そこからはレスがなくて(笑)。
小野瀬:いまだからお話ししますけど、実はその問い合わせはチェックしていて、あえてスルーしたんです。ヘルスケアの領域は、VCの皆さん興味をもってくれて、声をかけてくださることが多いのですが、いざ実際に投資するかというと、テクノロジーのことがわからなくて、話だけ聞いて満足する方も少なくない。仙石さんもそのパターンだろうなと。いま振り返ると、致命的なミスだったわけなんですけれども(笑)。
仙石:そうだったんですね。それで結局、シード投資をしていたANRIさんにつないでもらいお会いしたのですが、技術もさることながら、経営チームのバランスがすごくよくて、投資しなかったら後悔するなと。すぐに技術や経営の資料が欲しいとNDA(秘密保持契約)のお願いをさせていただき、自分にできる最速のスピードで進めていきました。
小野瀬:大和企業投資さんは大きな会社というイメージが強くて、NDAがその場で締結できることは驚きでしたが、本当に投資まで進むのかは、まだ疑問に思っていました。ただ、仙石さんのやる気はすごくて、打ち合わせが楽しかった。投資の判断軸も「チームを見て決める」とストレートで、すごく芯がある人だなと。
仙石:投資するうえで大事にしているのは、僕がその会社に入りたいと思うかどうか。経営者が人を巻き込む熱量をもっているか。そして、それを支える経営チームが重要です。CraifはシリーズAの段階でCEOの小野瀬さん、CTOの市川(裕樹)さんと、COOの水沼(未雅)さんと3人が揃っていて、全員が「人々が天寿を全うできる社会の実現」というビジョンに深く共鳴していた。そして、共同創業者の安井先生が技術顧問にいて、経営には口出しをしないというバランスも取れていました。
ただ、小野瀬さんとは意気投合したものの、社内では意見が割れたんです。僕が所属しているチームの投資先はSaaSなどのITサービスの会社が多くて、研究開発型のバイオ系は初めてだった。だから、技術やビジネスモデルのことを徹底的に調べて説得した経緯があります。