「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」 アマゾンが巨額を投じる新作の魅力


グローバル配信プラットフォームの完全オリジナル作品としてつくられるドラマシリーズは高額化の傾向が強く、Netflixのイギリス王室ドラマ「ザ・クラウン」やSFダークファンタジー「ストレンジャー・シングス」などは、1シーズンあたり5000万ドル規模の製作費だと推定されています。今回の「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」しかりです。

Disney+やNetflixなどで高い予算が設定されているのは、強力作品が「戦力」になると考えられているからです。新規会員が獲得でき、継続契約を促す役割をこれらの高額予算の作品が担っていると言えます。その背景には、配信プラットフォームの激しいシェア争いがあり、世界中でファンを醸成できる作品が求められているのです。

ロードオブザリング
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カギを握るクリエイターの人選


ただし、製作費の金額で作品クオリティが決まるわけではありません。開発から完成に至るまでの時間や労力、アイデアによって作品の価値は大きく左右されます。そして何よりも重要なのは、クリエイティブチームの人選です。

「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」を率いるクリエイター兼エグゼクティブ・プロデューサーは、J・D・ペインとパトリック・マッケイであることが既に発表されています。

欧米では、製作するスタジオがクリエイターの企画を承認し、作品化されるのが通常の流れですが、今回はペインとマッケイの企画から始まったものではありません。先の通りアマゾン・スタジオが原作権を購入し、その後2人に委ねられたのです。

J・D・ペインとパトリック・マッケイは、1997年からドラマや映画の世界に入り、約25年にわたって2人のタッグで脚本開発を進めてきています。アメリカの長寿TVシリーズ「スター・トレック」の映画版や、ディズニーの映画「ジャングル・クルーズ」の脚本に携わり、このほか多くの作品で実績を積んでいますが、作品を統括するショーランナーの立場ではありませんでした。

名うてのヒットメーカーとは言い切れない2人ですが、白羽の矢が立ったのは、原作の「指輪物語」の世界観を大切にしながらも、オリジナル脚本も加えて映像化し、アマゾン・プライム・ビデオ最大級のドラマシリーズを実現できる才能があると判断されたからでしょう。

大御所のクリエイターだけでなく、中堅キャリアのクリエイターが、いま大量につくられている配信のドラマシリーズをきっかけに、注目されていくというケースは実際にもかなり多いのです。今回のペインとマッケイもそんなクリエイターになる可能性は高いと考えています。

ロードオブザリング
「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」(c)Amazon Studios 2022年9月2日(金)よりPrime Videoにて独占配信予定

また、監督兼共同エグゼクティブ・プロデューサーは、イギリスBBCの最長ドラマシリーズ「ドクター・フー」の監督であるウェイン・チェ・イップで、「ジュラシック・ワールド/炎の王国」のJ・A・バヨナや「恋人たちのパリ」などのシャーロット・ブランドストームとともにメガホンを取る予定です。

気になる出演者は、「ゲーム・オブ・スローンズ」の最終シーズンで若かりし頃のネッド・スタークを演じたイギリス人俳優のロバート・アラマヨなどということで、全ては明かされてはいませんが、いまのところ日本の視聴者には馴染みがあまりないキャストが多い印象です。

それでもアマゾン・プライム・ビデオが世界240の国と地域に独占配信する「指輪物語」初のドラマシリーズというだけで、セールスポイントが大きい作品であることは確かです。配信はまだ約半年後ですが、クオリティが期待を裏切らなければ、ヒットが確約されるのは間違いないでしょう。

連載:グローバル視点で覗きたいエンタメビジネスの今
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文=長谷川朋子

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