ビジネス

2022.02.18 16:30

百貨店は開けてなんぼ。生活インフラ企業高島屋の矜持


コロナ第5波は収束に向かった。アフターコロナに向けて、どのような社会インフラを目指すのか。

高島屋が掲げているのが「まちづくり」戦略だ。まちづくりには、館の中をひとつの「まち」にするという意味と、館を中心に地域の活性化を図るというふたつの意味がある。

特に前者で鍵を握るのは、村田が重視する「非効率の効率」だろう。

「百貨店の存在意義のひとつは、何でも揃うワンストップの楽しさです。しかし、バブル崩壊とともに家電や呉服など非効率なものを縮小していった結果、つまらない売り場になってしまった。館を魅力ある『まち』にするには、コンテンツを増やすことが大切。また、文化的な催しもやるべきだし、お客様と店頭でのコミュニケーションにも時間を割いておもてなしにも力を入れたい。非効率さを残すことで、全体の効率は上がるはずです」

おそらく中長期的に「非効率の効率」は正しい。問題は、非効率さを支えるための利益を短期的にも出し続けられるかどうか。コロナの影響で、2021年2月期(連結)の最終損益は17年ぶりの赤字に転落した。果たしてどうやって利益を出すのか。

「コロナで売り上げの7%を占めるインバウンドが消滅しましたが、これまではインバウンドに頼って手を付けるべき改革が後回しになっていた。そういう意味で、今回の赤字は気づきを得る重要な機会でした。具体的には、まず構造改革によって百貨店単独で利益を出します。グループでは、成長分野である商業開発と金融を伸ばしていきたい」

村田の前には困難な道がまだ続いている。しかし、その足取りに迷いはないようだ。


むらた・よしお◎1961年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、高島屋へ入社。ドイツ駐在員を経て柏店長、2013年に執行役員、15年に常務取締役、19年3月から現職。コロナ禍では社員や取引先に直接メッセージを送るなどリーダーシップを発揮。

構成=村上 敬 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.089 2022年1月号(2021/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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