そんな中、今度はANAHD(ANAホールディングス)とANA(全日本空輸)両社の社長交代が発表された。
新社長は芝田浩二・井上慎一両氏
4月1日付けで、ANAホールディングスは代表取締役専務執行役員の芝田浩二氏が、ANAは現代表取締役専務 執行役員の井上慎一氏がそれぞれ代表取締役社長に昇格する。2月10日開催の臨時取締役会で決定された。
井上氏は1990年にANA入社。Peach Aviation CEOや、2019年にPeachと統合した「バニラエア」の代表取締役社長などを務めてきた。ちなみにPeach Aviationと全日本空輸株式会社は2021年8月から、Peachが運航する一部路線のコードシェアを開始している。
一方の芝田氏は1982年ANA入社、アライアンス室室長、欧州室長兼ロンドン支店長、ANAホールディングス上席執行役員などを歴任してきた。
2月10日午後3時からの記者会見には、ANAホールディングス現代表取締役社長(4月1日からは代表取締役会長に就任)片野坂真哉氏と、新社長に就任予定の芝田浩二氏が出席、メディアの質疑に応答した。
会見は2月10日15:00〜、ANAインターコンチネンタルホテル東京で行われた
まず片野坂現社長は、芝田氏を新社長に選んだ理由として次の3つを挙げた。
「1つ目はとにかくキモが座っていること。『大丈夫だよ』が口癖。あまり大丈夫とは思えない空気の時に、『いけますよ』と言える、根拠のある貫禄があること。
2つ目は、コロナを戦う上での方針がしっかり共有できているので安心であること。
3つ目は、中国語も英語も堪能、アライアンスも体験しているし、ヨーロッパ統合駐在も経験していて国際マインドも持っていること。『avatarin(アバターイン。アバター技術を使ってバーチャルな「瞬間移動」を実現する技術的取り組み)』など新事業に取り組む上でのマインドも持っている。これからのANAにふさわしいと思えた」
「飛行機に乗ることは夢のまた夢」だった
芝田氏は鹿児島県奄美大島出身。離島出身者としての思い、航空事業への思いを以下のように語った。
「奄美に住んでいた頃は、『飛行機に乗ることは夢のまた夢』だった。なんとか普通に飛行機に乗れるインフラが実現できないか、と思っていた。
また、1979〜81年、大学の4〜5年で休学をして、北京の日本大使館に勤務していた。その折のある日、北京空港の中をANAのキャビン・アテンダントが颯爽と闊歩するのを見て、異国にいる身ながら『ここは故郷鹿児島空港か?』と錯覚したのは衝撃的な体験だった。あとでわかったが、ちょうどANAは、国際定期便進出を目指してチャーター便運行を拡大していた頃だった。
帰国後いったん大学に戻ってから、当時の霞ヶ関ビルの全日空本社を訪ね、北京空港でのその忘れえぬ思い出、国際定期便進出への思いを申し述べたのが、入社に至った経緯です」
離島での少年時代の原風景を胸に秘め、航空事業に思いを馳せた青年時代から数十年。「第3ブランド」も期待されるANAホールディングス新社長として、芝田氏に今、かけられる期待は大きい。