ビジネス

2022.02.14

たった5秒、文字だらけ。米国スーパーボウル中継中のCMが訴えたかったこと

Reddit - Superb Owl (case study)より


5秒CMが意図するもの


Redditは、特定の領域に焦点を当てたサブレディット(Subreddit)と呼ばれるコミュニティを多数持つ。サブレディットはユーザーが自主的に立ち上げ可能で、他のユーザーがトピックやコメントを投稿でき、さらにそれぞれについて得点の加減で投票も可能だ。

Redditを一躍有名にしたのは、2021年1月の「ゲーム・ストップ事件」と呼ばれる出来事だ。ゲーム・ストップは、米国で実店舗を展開するゲームストア会社だが、この会社の株価が突如として跳ね上がり、空売りによる儲けを狙っていたウォール街のヘッジファンドが大損する事態に陥った。

この株価高騰は、サブレディットの1つである「Wall Street Bets」での「ゲーム・ストップ株を買おう」という呼びかけが要因と言われている。この事件は、「自由な個人(サブレディット)」vs「確立された組織(ヘッジファンド)」の典型的な例として各国で大きく報道された。

実際、筆者がRedditの存在を初めて知ったのも、このニュースによってだ。冒頭に紹介した5秒CMの「負け犬だって、お互いが1つの考えでまとまれば、何だって達成できるのだ」というメッセージは、このゲーム・ストップ事件を念頭においている。事件の翌月の2021年2月に、このCMは流されているのだ。

5秒CMの制作者側の説明によれば、企画の意図は「Wall Street Betsが金融界で起こしたことを、広告界でも起こそうじゃないか」といったことだったという。そのために、広告業界でもっともエスタブリッシュメントが集まるスーパーボウルのCM枠に、学生が書いたスライド1枚のような5秒CMで殴り込みをかけたというわけだ。

この5秒CMの文章には、別のサブレディットである「Superb Owl(卓越したフクロウ)」への投稿を呼び掛けるフレーズ(Maybe you’ll help r/SuperbOwl teach the world about majesty of owls)もあるが、現実的なメッセージというよりは、スーパーボウル(Super Bowl)を茶化した一種の遊び心と見るのが妥当だろう。

このCMから窺い知れるのは、アメリカでは「名もなき個人」vs「確立された組織/一流企業」といった構図が、想像以上に大きいことだ。そして「名もなき個人」の側に立つRedditのような存在や、今回の5秒CMのようなゲリラ的な試みが、人々の大きな賛意を得ることも見てとれる。さて、日本では、どうだろうか。

連載:先進事例に学ぶ広告コミュニケーションのいま
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文=佐藤達郎

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