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2015.05.26

女が撮った“女のための映画“ 『ピッチ・パーフェクト2』が大ヒットの理由

『ピッチ・パーフェクト2』の監督エリザベス・バンクス。(Photo by JB Lacroix/WireImage)



『ピッチ・パーフェクト2』の興行収入が公開最初の週末に7030万ドルを記録、“女性による女性のための映画”がビッグ・ビジネスになることを証明した。『ピッチ・パーフェクト』シリーズは大学の女子だけのアカペラサークルを描いたコメディ。ライバルと競い合って大会を目指す前作は全世界で1億1500万ドルを稼ぎ出した。

負け犬状態から這い上がって行くストーリーだが、真のテーマは女同士の友情。『ピッチ・パーフェクト2』は前作と同じくエリザベス・バンクスが監督。アナ・ケンドリックやレベル・ウィルソンが出演する。公開最初の週末で、観客は75%が女性。その62%が25歳以下だった。同時期に公開された『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』は出演者の7割が男性で、興行収入は4440万ドル。

女性監督による作品でこれまで公開最初の週末の興行収入がもっとも高かったのは『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の8500万ドル。だが、昨年の興行収入トップ250映画のなかで女性監督が占める割合はたったの7%だ。

これまでアカデミー監督賞にノミネートされた女性監督はわずか4人で、受賞したのはキャスリン・ビグローだけ。「ニューヨークタイムズ」も記事にしていたが、2013年に行われたある調査によれば、2002年から2012年に公開された興行収入トップ100映画のうち、女性が主人公の作品は15%、台詞がある役のうち女性が占める割合は30%、女性が監督した作品はたった4.4%だった。

しかし、ハリウッドもそろそろ気づいてもよい頃だ。ティーンの女子は映画に熱心に通う観客層なのだ。ジャスティン・ビーバーやテイラー・スウィフトが少女たちの支持で、世界でももっとも稼げるミュージシャンとなった。『ピッチ・パーフェクト2』はPG-13指定だが、少女たちは公開最初の週末には友達と観に行き、その次の週には両親と観に行き、さらにその次の週も誰かしらと観に行くだろう。

『ハンガー・ゲーム』から『ゴーン・ガール』まで多くの作品が女性を主役にすれば当たると証明している。しかし、そうした作品が製作されるまでには幾多の困難が待ち受けている。リーズ・ウィザースプーンは、オファーされる役にうんざりして、女性プロデューサーと一緒に映画製作会社パシフィック・スタンダードを立ち上げ、これまで『ゴーン・ガール』『グッド・ライ〜いちばん優しい嘘〜』などのヒット作を生み出している。

俳優としても、女性は男性よりギャラが低い。ジェニファー・ローレンスは、ハリウッド有数のスターだが『アメリカン・ハッスル』では男性俳優と比べて低いギャラしかもらっていない。彼女の収入は映画の収益の7%だったが、共演したブラッドレー・クーパーやクリスチャン・ベイルは9%もらっていたとウィキリークスが暴露したのだ。先日はアメリカ自由人権協会がハリウッドに雇用の不平等の改正を求めたが、女優のサルマ・ハエックはカンヌ映画祭で「映画業界で女性が男性より稼げるのはポルノ業界だけよ」と語った。

『ピッチ・パーフェクト2』はユニバーサルの制作。業界で2番目に利益を上げている同社は、ハリウッドで唯一女性重役がいる企業としても知られている。

文=ナタリー・ロベーム(Forbes)/ 編集=遠藤京子

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