〈みずほ〉賞の選考にあたり、「イノベーティブな事業に挑戦し、経済・社会に大きなインパクトをもたらしているか」という点に重点を置き、IT部門およびサステナビリティ部門で活躍する2社を選出しました。
新型コロナウイルスの流行など、外部環境の変化があらゆる産業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を一層進展させるなかで、IT部門は、テクノロジー活用を通じた産業課題解決への貢献度やビジネスの成長可能性といった観点に着目し、審査を行いました。
一方、持続可能な社会の実現に向け、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)が経営戦略の前提となるなか、環境・社会・経済の課題の大きさ、解決につながるテクノロジーを備えているか、ビジネスモデルは持続可能か、に重点を置き、サステナビリティ部門として審査しました。
IT部門で選出したカンリーは、「店舗に関わる全ての人に、最も信頼されるインフラを創る」をミッションに掲げ、GoogleマイビジネスやSNS運用など、複数店舗展開企業のマーケティングチャネル・店舗運営を一括管理できるクラウドサービスを提供。安価で簡単に店舗マーケティングを効率化・高度化できる点が大きな特徴で、2020年7月のリリース以降、約1年間で1万5000店舗以上に導入され、圧倒的な支持を得ています。
特に、小売り・飲食業をはじめとした実店舗ビジネスは、新型コロナウイルスなどの影響で経営環境が最も変化した業界のひとつです。集客チャネルの多角化や非対面チャネルを通じたお客さまへのサービス提供力強化などが必要不可欠となる一方、常態化する人手不足のなかで、膨大な店舗管理・運用工数をいかに効率化するかが、重大な課題となっていました。
また、店舗利用者として、時短営業をしている店舗の正確な営業時間を把握するのに苦労したことは、記憶に新しいと思います。こうした店舗・消費者双方の抱える課題を解決し、店舗ビジネスのDXをリードしている点を、高く評価しています。
こうした急成長は、秋山祐太朗・辰巳衛のタッグを筆頭とした、強い経営チームの経営手腕のたまものと言えます。もち前の行動力と発信力で、数多くのステークホルダーを巻き込み、大きなうねりとなって、さらに大きな次のビジネスをつくり出していかれることを期待しています。
一方、サステナビリティ部門で選出したサステナブル・ラボは、「SDGs×ビッグデータで“良い企業”を照らす」をビジョンに掲げ、企業のSDGs貢献度や環境・社会貢献度などのさまざまな非財務情報を、データとAIで可視化する情報プラットフォームを提供しています。
昨今では、経済性のみならず、環境性・社会性を併せもつ「強くて優しい」企業となること、すなわち、「サステナビリティ経営」が求められています。
サステナブル・ラボは、データで語ることが難しかったESG/SDGs推進に客観性と具体性を与えたという点で非常に画期的です。企業の推進度合いをスコアで把握し、企業間の比較が可能となるだけでなく、企業の利益や株価にどのように影響しているか等を把握できるため、具体的な施策につなげることも可能になります。
同社CEOの平瀬錬司は、大学在学中に環境・農業・福祉など、サステナブル領域のベンチャービジネスにエンジニアとして参画し2社のバイアウトを経験しています。本領域についての深く幅広い知見、高い視座と先見性を生かし、高いレベルの金融・環境評価・AIの専門家集団を率い、事業を推進されている点を高く評価しています。今後同社が、SXを社会全体で進めていくために必要不可欠なデータプラットフォームになっていくことを、期待しています。
〈みずほ〉は今後とも、未来を担うイノベーション企業のビジネスパートナーとして、挑戦する起業家に伴走し、ともに日本の経済・社会の発展に貢献していきます。
<IT部門>
カンリー
秋山祐太朗、辰巳 衛 代表取締役Co-CEO
設立:2018年8月
従業員数:40人
資本金:4億5647万円(資本準備金含む)
事業内容:複数の店舗を運営する企業におけるGoogleマイビジネス(GMB)、SNS、HPなどを一括管理できるクラウドツール「Canly(カンリー)」の開発・提供。管理・運用コストの大幅な削減、口コミなどのデータ分析による店舗運営上の課題を特定し、導入企業の成長をサポートする店舗管理クラウドサービス。2020年7月のリリース以降、約1年間で1万5000店舗以上に導入されている。
<サステナビリティ部門>
サステナブル・ラボ
平瀬錬司 代表取締役CEO
設立:2019年1月
従業員数:13人
資本金:2億2299万円(資本準備金含む)
事業内容:非財務データを一元化し、SDGs推進度を見える化する非財務/未財務データバンク「ESGテラスト」の開発・提供。日本で唯一のSDGs/ESGに特化した非財務ビッグデータ企業。目立たないが環境・社会利益を多く生み出している企業や自治体に光を照らすことや、企業や自治体が、真に経済利益と環境・社会利益の創出を両立できる社会を目指している。
大櫃直人(おおひつ・なおと)◎みずほ銀行 執行理事 リテール・事業法人部門副部門長。1988年現・みずほ銀行入行。本部法人営業、営業店長等を経て、2016年イノベーション企業支援部長、18年執行役員、21年より現任。年間約1000社(一日平均4、5社)の経営者と面談し、企業の成長支援をライフワークとして、日本の将来産業の育成に日々挑戦している。