ひと口に「人材サービス」といっても事業形態はさまざまだ。大きく人材派遣と人材募集に分かれる。人材派遣の場合、派遣されるスタッフは派遣先企業の指揮命令を受けるが、雇用契約は派遣会社と結び賃金をもらう。派遣企業は派遣先から派遣料を受け取るしくみだ。
人材募集はさらに二つの業種に分類される。求人広告と人材紹介だ。求人広告はプラットフォームに求人企業の募集広告を掲載。広告料が人材会社の懐に入る。人材紹介は主に転職希望者と求人企業の橋渡し役を担う。マッチングに成功すれば、紹介会社は求人企業から報酬を受け取る。足元で特に伸びが顕著なのは人材紹介のビジネスだ。
昨年11月、人材サービス業界の動向をめぐって、ちょっとしたサプライズがあった。人材紹介を手掛けるJAC Recruitment(ジェイ エイ シー リクルートメント)が前2021年12月期業績予想の上方修正に踏み切った。本業の儲けを示す営業利益計画は従来の50億5900万円から57億5000万円へ上振れ。営業減益予想から一転、増益(前期比約12%増)の見込みとなった。
増額修正を受けた翌日の株式市場では、同社の株価が一時、前日比236円高の2433円まで急騰した。「ポジティブサプライズ」となった一因は、同社に対して「期中の収益予想の引き上げが最近では珍しく、手堅い計画を公表するというイメージが強い」(業界ウォッチャー)からだ。期中の営業利益計画の上方修正は16年10月の同年1~9月決算公表時に同年12月期通期の予想を見直して以来のことである。
その後、期中に下方修正に踏み切ったケースも2度あるが、いずれも減額した計画を上回って「着地」した。このため、今回の上方修正は「業績の先行きに対する自信の表れ」(同)と受け止められた格好だ。
人気職業は、脱炭素人材やコンプライアンス
人材紹介ビジネス活況の大きな要因は、IT関連人材の求人が膨らんでいることだ。多くの企業がコロナ禍でデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを加速。それに伴い、人工知能(AI)、クラウドサービス、高速インターネットなどを積極活用して業務フローの見直しやビジネスモデルの変革などに着手する動きが広がっている。テレビ会議システムの導入などもその一例だ。
「脱炭素関連」人材の求人も急増している。温室効果ガスの排出量ゼロ、いわゆる「カーボンニュートラル」への対応は今や、国内企業にとって喫緊の課題。関連分野に精通したマネージャークラスなどの囲い込みが過熱し、さながら「脱炭素人材バブル」(ジャーナリスト)の様相を呈しているという。
業界ウォッチャーは「(事業活動に関する、あらゆる温室効果ガスの排出量を合計したサプライチェーン排出量の定量的な指標とされる)“スコープ”の概念を理解しているかどうかだけでも採用側の評価が変わってくる」と指摘する。