ウォルマートが2021年12月末に米特許商標庁に申請した新たな商標群は、同社が仮想の製品を開発・販売するつもりであることを示唆している。その内容は、電子機器、家電、家具、楽器、室内装飾品、玩具、スポーツ用品、パーソナルケア用品など、多岐にわたる。
メタバース参入競争に加わっているのは、ウォルマートだけではない。フェイスブックが先頭を走っているのは明らかだが、ナイキ、ギャップ、アンダーアーマー、アディダス、ラルフローレン、アーバン・アウトフィッターズ、アバクロンビー&フィッチなどもゲームに加わっている。
どうやら、誰も取り残されたくないようだ。しかし、メタバースがどこへ向かうのか、私たちは本当にわかっているのだろうか? 『セカンドライフ』の技術的に進歩したバージョンになるのか? それとも、もっと違う何かになるのだろうか?
未来へ向かって走るレースでは、道を見失うリスクが常にある。新たなレベルの技術革命に導かれている場合はなおさらだ。これまでも目にしてきたことだが、次世代のモノや体験を生み出して開発しても、誰もたいして欲しがらない、という結果になるかもしれない。現時点では扱いにくくて不格好なあのヘッドセットを、私たち全員が装着する可能性はどれくらいあるのだろうか?
もっと軽くてスタイリッシュなAR(拡張現実)ヘッドセットをいずれ誰かがつくるだろうことは、筆者も疑ってはいない。だがそれは、前述のようなブランドがそれぞれのメタバースを成功させるのに間にあうのだろうか。
グーグルが「グーグルグラス」を開発した後、レイバンが、もっと消費者にやさしいバージョンを開発するまでに、ほぼ10年を要した。
グーグルグラスは、技術的には素晴らしかった。確かに見た目はやや奇妙だったが、最大の問題は、あの優秀なデザイナーたちが、それを使ってユーザーが何をするべきか、その使いみちを見つけ出せなかったことにある。
筆者も、まだ自分のグーグルグラスを持っている(少なくとも、どこかにある)。手に入れたときには興奮したが、提供されているソフトウェアのほとんどが、筆者のニーズにも欲求にも一致しなかったせいで、その興奮はすぐにすり減ってしまった。
筆者の記憶が正しければ、ほとんどのソフトウェア製品はゴルフを中心に展開されていた。筆者はゴルフをしない。別の問題もあった。録画をしたり電話で話をしたりしていると、グラスの側面がとても熱くなるのだ。その熱がこめかみに押しつけられていると、あまり安らかな気持ちにはなれなかった。
噂によれば、アップルは今年、独自のウェアラブル技術の傑作をリリースするという。同社の製品は、メタバースやそれに参入するブランドが必要としているものになるかもしれない。だが、それでもまだ、答えを見つけなければならない疑問はある。