それは、新型コロナウイルスがより“リスクの低いもの”になれば、労働者は再び出勤することになると考えられるためだ。先ごろ米CNBCの番組に出演した米エクイティ・グループ・インベストメンツの創業者で会長のゼルは、感染状況が改善すれば、オフィス市場ではすぐにも、需要と供給の差が埋まることになるとの見方を示した。
ゼルは、オフィス向け物件の需要の回復スピードは、活況を呈する業界がどれだけの労働者を雇用し、オフィス勤務とするか次第だと予測。また、働き方については、今後も「ハイブリッド」な形が一般的なものになるだろうと語った。
一方、ショッピングモールなどの小売業向けの不動産の今後については、より懐疑的だという。「小売業の成長力には深刻な問題がある」として、オフィス向けの物件に比べれば、かなりの“落下中のナイフ(手を出してはいけないもの)”とみていることを明らかにした。
また、ゼルはオフィス市場に影響を与える主な要因について、「老朽化」を挙げている。現在は物件の価格と魅力の間に大きな開きがあるとして、一部のオフィスは「多額の投資」をせずに、買い手を見つけることは難しいだろうと指摘した。
パンデミックの発生により、多くの労働者は在宅勤務を余儀なくされ、主要都市のオフィスで働く労働者の数は急激した。全国補償保険協議会(NCCI)の調査によれば、パンデミック発生前は米国内の労働者の75%には、在宅勤務の経験がなかったという。
だが、調査会社ピューリサーチによると、2020年は労働者のうち「自分の仕事は在宅で行うことができる」と答えた人の71%が、在宅で仕事をしていた。
米国では現在、デロイトやメタ、グーグルのほか、リフト、セールスフォース、ウーバーといった数多くの企業が、新型コロナウイルスのワクチン接種を済ませた従業員を対象に、出勤を認めるようになっている。ただ、各社とも、オフィスでのフルタイムの勤務は求めていない。
資産は推定59億ドル
米エクイティ・グループ・インベストメンツの創業者であるゼルの資産は、フォーブスの推計ではおよそ59億ドル(約6700億円)にのぼる。
ゼルは自ら設立したオフィス不動産投資信託(REIT)、エクイティ・オフィス・プロパティーズ・トラスト(EOP)を2007年(株価大暴落の直前)、米投資会社ブラックストーン・グループに390億ドルで売却した。数百のオフィス物件を含むポートフォリオを持っていたEOPの売却は、米国史上最大規模の不動産取引の一つとされている。