AIで消化器疾患の診断支援、米Iterative Scopesが170億円調達

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AI(人工知能)を用いた消化器疾患診断支援ツールなどを開発する米スタートアップ、イテラティブ・スコープス(Iterative Scopes、本社マサチューセッツ州ボストン)は19日、シリーズBラウンドで1億5000万ドル(約170億円)を調達したと発表した。同社は昨年、大腸ポリープをリアルタイムで検出できる製品の臨床データを米食品医薬品局(FDA)に提出し、承認待ちとなっている。

イテラティブ社はシンガポール出身の外科医であるジョナサン・ウン(33)最高経営責任者(CEO)が2017年に創業した。ウンはカンボジアで医師の育成に携わっていた時期に、カンボジアの第一世代の医師の多くが単純な腫瘍すら識別できないことに気づいた。その後、MBAを取得するために留学した米国でも、同じように医師が初期の病変を見落としてしまう問題が起きていることを知り、起業を決意したという。

イテラティブ社では、AIと機械学習を活用して医師にいわば「もうひとつの目」を提供し、大腸ポリープや、炎症性腸疾患など消化器疾患の特徴を見つけやすくしようとしている。大腸ポリープは放置しておくと、悪性化して大腸がんになることがある。大腸がんは米国の部位別がん死亡数で2番目に多いものだ。

「消化器分野で最大の問題のひとつは、臨床判断のかなりの部分が視覚的な手がかりに基づいているという点です」とイテラティブ社のサイア・ラウーフ副社長は話す。腸内の病変や潰瘍は肉眼では確認しにくい場合もあり、内視鏡を使ってもその画像の解釈は医師によって異なることがある。画像の解釈を誤ると、患者はふさわしい治療を受けられなかったり、関連する治験に登録する機会を逸したりするおそれがある。

イテラティブ社は自社のプラットフォームを通じて、消化器疾患の診断を標準化したい考えだ。これまでに10万人を超える患者の内視鏡画像を入手し、炎症性腸疾患や大腸ポリープの特徴を見つけられるようソフトウェアを訓練しているという。開発したツールでは、数分以内に内視鏡画像から疑わしい箇所を特定し、それを医師に提示して診断の精度を上げられるようにしている。

イテラティブ社は昨年、AIを活用した大腸ポリープ検出機器「SKOUT(スカウト」の臨床データをFDAに提出しており、今年3月末までに承認される見通しとなっている。

今回の資金調達ラウンドを共同で主導したインサイト・パートナーズのマネジングディレクター、ロン・ジャフは、イテラティブ社に惹かれた理由の一つとしてSKOUTの大腸ポリープ検出精度の高さを挙げ、「がん発症の下流リスクの特定でゲームチェンジャーになる」と期待を寄せている。

イテラティブ社は新たに得た資金を使って、診断プラットフォームの改良を進める方針だ。このプラットフォームでは、大腸がんなど消化器疾患の患者にどのような治療方法が効くかの予測もできる。ラウーフは「相当な量の患者データを集めているので、より優れた予測方法があるはずです」と述べている。

この資金調達により、イテラティブ社の累計資金調達額は1億9500万ドル(約223億円)となった。

編集=江戸伸禎

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