ビジネス

2022.01.25 08:00

リチャード・ブランソン、ティム・クック…「もの言う経営者」に学ぶ、世界水準の発信力

社会的責任を負う組織のリーダーとして、現代の経営者は政治や社会問題にどう対峙すべきか? 


経営者の言葉が企業価値を決めるといわれる時代、メッセージの重要性はかつてなく高まっている。1月25日発売のForbes JAPAN最新号では、「人を動かすメッセージ力」を特集。ヴァージン、アップル、セールスフォース、パタゴニアやレゴ……。世界的企業のトップたちの旗幟鮮明な姿勢は、沈黙は金ではなく罪でさえあることを物語っている。

「経営者の社会的発信がより重要になっていくだろう」

──ヴァージン・グループ創業者 リチャード・ブランソン

「ビジネスにかかわる経営者が一致団結して声を上げるとき、本当の変化が起きる」

ビジネスSNSのリンクトインにこう投稿したのは、英ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソンだ。

ブランソンは、70歳を超えたいまも精力的に事業活動に励み、世界に話題を振りまいている。2021年7月には、グループのヴァージン・ギャラクティックで最初の民間宇宙船搭乗者として宇宙旅行を経験。米アマゾン・ドットコム創業者のジェフ・ベゾスと並び、宇宙旅行を経験した起業家として話題を集めた。


そんなブランソンが発信を続けているのは、危機意識からだ。

「世界の課題は、もはや国家だけでは解決できない。経営者が企業価値を高めることだけを考える時代は終わった」

人口増加、気候変動、貧困問題などの課題には、地球市民の一員として発信をする必要があると訴え続けている。

ブランソンだけでなく、欧米ではSNSやカンファレンスを通じて経営者の政治的・社会的な発信が増えている。経営者の説得力をもった発信力が、より問われる時代になっているといえよう。

「資本主義は死んだ」

──セールスフォース・ドットコム共同創業者 マーク・ベニオフ

米国でその言動が注目を集めるのが、セールスフォース・ドットコム共同商業者のマーク・ベニオフだ。米オラクルの従業員から独立し、クラウドサービスで企業向けシステムを提供するセールスフォースを創業、同社はいまや世界有数のグローバル企業に成長した。

事業の成功とともに、ベニオフ自らもツイッターなどで社会問題に対するメッセージを積極的に発信してきた。


「資本主義は機能不全を起こし、死んだも同然の状態だ。株主利益の最大化のみを追求してきた結果、途方もない格差が広がり、地球は危機的な状況にある」

20年、世界経済フォーラムが主催する通称ダボス会議でのこの発言は、とりわけ注目を集めた。ベニオフは短期的利益追求に振れすぎた現状の資本主義に対する警鐘を鳴らし、持続可能な社会への転換を訴え続けている。

「企業が率先して変わらなくてはならないのは、企業の宿命。社会を変えるためには、言葉の力が重要になる」

このメッセージは、人を動かすためには、言葉は端的で直截でなくてはならないことを示唆している。

「私たちは、絶滅に正面から立ち向かわなければならない」

──パタゴニア前CEO ローズ・マーカリオ

もちろん、メッセージだけでなく、それを行動で示すことも大切になる。

日本でも人気の米アウトドアブランド「パタゴニア」は、社会課題に積極的に発信することで知られている。そのイメージを決定づけたのは、14年から21年までCEOを務めたローズ・マーカリオだ。



「絶滅に正面から立ち向かわなければならない」と語るマーカリオは、地球環境保護を訴えるオピニオンリーダーとして知られ、CEO時代が、トランプ政権を強烈に批判するメッセージを繰り返した。時には環境活動のデモの一貫として、店舗を一時的に閉じたこともある。

「常に行動が伴わなければ、発信したとは言えない」。行動が伴うからこそ、メッセージが説得力をもって印象づけられるとマーカリオは言う。その姿勢はいまも健全で、培養肉のスタートアップに投資するなど、持続可能な社会の実現を行動で示そうとしている。
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文=蛯谷 敏 イラスト=フィリップ・ペライク

この記事は 「Forbes JAPAN No.091 2022年月3号(2022/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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