メリンダ・ゲイツ、10年前から揺るがない「自己表現」とは

メリンダ・フレンチ・ゲイツ(Getty Images)


10年前のメリンダ・ゲイツは?


こうしたメリンダ氏のプレゼンスは、いつ生まれたのだろうか。

10年ほど前に撮影された、TEDでのスピーチ映像を見てほしい。そこに写っている彼女は、トープ色のカラーレス・パンツスーツにグリーンのインナーを合わせ、ゴールドのネックレスとイヤリングを身に着けている。肩に届くくらいのセミロングの髪を丁寧に整え、ごく自然なメイクを施している


2012年4月、TEDに出演したメリンダ氏

スピーチ中は真剣な表情で、落ち着いた低めの声で語りかける。手で作るジェスチャーや体の動きも無駄がなくゆったりとしている。筆者は個人的にも好きな姿だ。

全体的にシックでカチッとしており、現在に比べてビジネス感が強い。この時から華美すぎる印象はなく、「自分の立ち位置」や「社会における自分のあり方」を意識したプレゼンスだといえる。

揺るがない自己表現


再び現在のメリンダ氏を見てみよう。やはり10年前からベースとなる姿勢は変わっていない。


米ForbesのYouTubeに出演した2021年3月のメリンダ氏

変化があったとすれば、以前よりも明るめの服装が増え、髪が長めになったこと。これは、世界的なビジネスシーンにおける服装のカジュアル化が進んだことが影響しているのではないだろうか。

現在は、人のイメージのカジュアル化や、軽快さも求められる時代となってきている。そのため明るくフェミニンな服装をすることで、自身の強いイメージの全体像を和らげ、アプローチャブル(近づきやすく)にしようとしているのかもしれない。ただ、こうした装いだと、一度言葉を発したときに本来彼女が持つ「強さ」とのギャップが強調され、より際立つような結果にはなってしまうのだが。

いずれにせよ、彼女が自分の外見の微調整をするにあたって、「華やかな自分」や「主役を演じる自分」といった表現はメインテーマではない。そこが揺らがないのがメリンダ・ゲイツという人なのだろう。

プレゼンスとは、その人の在り方であり生き方、そしてその人の思想や価値観が顕著に反映される部分だ。印象を良くするための“方法論”も大事だが、より大事なのはその人の「心のあり方」なのかもしれない。

文=日野江都子

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