米ニュースサイト「アクシオス」が報じたところによると、ドアダッシュは2021年12月6日、米ニューヨーク・マンハッタンのチェルシー地区で、超高速の配達サービスを開始すると発表した。この地区に住む消費者は、オンライン・コンビニエンス・ストア「ダッシュマート(DashMart)」にある商品を注文できる。手数料は0.99ドルから1.99ドルで、10分から15分以内に受け取りが可能だという。
配達を担うのは、通常のドアダッシュ配達員(ギグワーカー)ではなく、ドアダッシュが新たに設立した子会社の「ダッシュコープ(DashCorp)」が採用するフルタイム配達員だ。時給は15ドルで、福利厚生も利用可能。配達には電動アシスト自転車を利用する。
一方で、2021年12月はじめに行われたオンラインディスカッションに出席した業界専門家は、ドアダッシュが超高速配達を保証したことについて、消費者は本当にそうしたサービスを必要としているのかと首を傾げている。
Aptosリテール・マーケット・インサイト部門ディレクターのデイブ・ブルーノ(Dave Bruno)は、「私自身も食料品配達サービスをかなり頻繁に利用しているが、超高速配達にそれほど注力することは理解に苦しむ」と話す。「レストランの食事を超高速で配達するのは納得できる。しかし、15分から20分以内に生鮮食料品を必要とする人が、そんなにいるだろうか」
デリバリーサービス分野では、超高速配達が次なる大きな戦いの舞台となりつつある。トルコのGetir、ロシアのバイク(Buyk)、独のゴリラズ(Gorillas)、米国のゴーパフ、フリッジ・ノー・モア(Fridge No More)、Jokrといったスタートアップがすでに、10分から15分以内に配達するサービスを提供している。
ドアダッシュはゴリラズの買収を狙っているが、Axiosによれば交渉は成立しなかったようだ。
デリバリーサービス業界に参入する企業は増えている。しかし、今回のオンラインディスカッションでは、このビジネスモデルの基礎的条件について疑問を呈する声が多くあがった。
英調査会社グローバルデータのマネージングディレクター、ニール・サンダースは、「デリバリーサービスに参入した企業は、どうやって利益を出すつもりなのだろうか」と首をひねった。「そうした企業のビジネスモデルは大半が安定していない」
セントジョセフ大学で食品マーケティングを研究するリチャード・J・ジョージ(Richard J. George)教授は、「はじめは価格が抑えられているので、試そうという人がいるかもしれない。しかし、その後の価格設定次第では、継続して使ってもらえる保証はない」と話す。「継続利用するユーザーの基盤がなければ、このビジネスモデルが長期的に利益を得られるかどうかは疑わしい」
Kearney Consumer Instituteのケイティ・トーマス(Katie Thomas)も、「人口密度の低い都市では、どうやって規模を拡大するつもりなのだろうか」と疑問を呈する。
ドアダッシュの超高速配達サービスはまだ始まったばかりだが、すでに先陣を切っている企業もある。150億ドルという評価でベンチャー支援を受けたゴーパフは、ウーバーイーツと提携し、より認知度の高い「Uber」アプリを通じて、コンビニエンス・ストアの商品を配達している。