感謝祭直前の2021年11月23日、ギャップは、通年業績と売上見通しを大幅に下方修正した。そして翌24日には、株価がわずか1日で24%も下落するという打撃を受けた。
「どうやらギャップは、身動きのとれない状態に陥ってしまったようだ」。データマッピング企業Esriの小売業専門ストラテジスト、ギャリー・サンカリー(Gary Sankary)はそう話す。
「私は、ギャップがサプライチェーン問題に創意工夫で対処し、1年で最も売上が多いこの時期に在庫を確保しようとしている努力を強く支持する。同社としては利益を犠牲にするしかなかった。短期的な視点の投資家たちゆえに、株式市場で打撃を受けざるを得なかったが」
ギャップは下方修正の理由として、パンデミックの影響でベトナムにある工場が閉鎖されたことを挙げた。ベトナム工場では、同社製品の30%が製造されている。
他国の工場再開を踏まえると、ベトナムで工場閉鎖が2カ月半続いたのは予想外であり、ギャップの見込みを大きく超えていた。2021年第3四半期における同社の手持ち在庫の平均は、2019年第3四半期と比較して11%減っている。
ギャップは、混雑する西海岸の港を迂回するため、かなりの量の在庫を東海岸の港に移動させた。同社は、航空輸送に過剰に依存せずに済むよう、長期的な措置を講じているという。たとえば、製品製造のデジタル化でターンアラウンドを加速化させたり、多国籍ベンダーをより活用したり、在庫管理に人工知能(AI)を利用したりする、といったことだ。
しかし短期的には、同社全体で見られる勢いを活かすためには航空輸送への資金投入が必要だ、とギャップのソニア・シンガル最高経営責任者(CEO)は述べる。
シンガルは11月23日、CNBCに対してこう述べた。「年末商戦で他社に負けないよう、4ブランド(ギャップ、オールドネイビー、バナナ・リパブリック、アスレタ)全てで、しかるべき量の在庫を確保するのが正しいことだと確信している」
ケンブリッジ・リテール・アドバイザー(Cambridge Retail Advisors)のマネージングパートナー、ケン・モリス(Ken Morris)は、「航空輸送に力を入れることが、どのような展開を招くのか。多くの小売業がギャップを注視していくだろう」と話す。「多額のコストはかかる。しかしシンガルが言うように、店舗在庫を確保して客に商品を提供するのは何よりも重要だ」